【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「お気遣いいただきありがとうございます。わたしもこうやって動き回ってしまうので、ご迷惑でしたらおっしゃってください。そのときは、他の場所を用意していただけないか相談しますので」
「迷惑だなんて……」
 彼は顔の前で両手を開いてふるふると振った。
 迷惑ではない。その言葉にアンヌッカもほっと息をつく。
 ここはメリネ魔法研究所ではない。軍には軍のやり方があるのもわかっている。だけど、古代文字の解読のためには、このやり方が一番効率がよいのだ。
「ありがとうございます」
 アンヌッカが礼を口にすると、彼はもごもごと何かを呟きながら下を向いた。

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