Devilの教え
「そっか……」

 何ひとつ納得してないのにそうとしか答えられなかったのは、アスマの声が物凄く低かったからで、変にしつこく質問して怒りを買ったら、あたしまで泣かされるんじゃないかと危惧したから。


 あたしは多分、アスマにあんな目で見られただけで泣いちゃうと思う。


 あんな冷たい目で見られて平静でいられるほど、あたしってば強くない。


「お前こんなとこにひとりで来たのかよ?」

「え!?」

「寂しい奴だな」

「た、たまたまだよ! 今日はたまたまひとりなの!」

 別にムキになる必要はないけど、寂しい奴だなんて思われたくなかったから、大きな声で言い返したら、「元気そうじゃねえか」って笑われた。


 思わずその妖艶な笑みに見惚れてしまった事は言い逃れ出来ない。


 だけどそれをアスマ本人には気付かれたくなくて、すぐに視線を駅前に向けたあたしは、
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