Devilの教え
「――あ」

 本日二度目となるその言葉を呑み込む羽目になった。


 ここまで来ると不運でしかない星の下に生まれたっていうより(ほか)ない。


 今日出掛けようと思った自分を心底恨んだ。


 数十メートル向こうにある駅から、人混みをこっちに向って歩いてくる“元”彼氏の姿に、倒れてしまいそうなくらい激しい眩暈(めまい)がした。


――あたしに絶対気付かないで!


 なんて願いが通じる訳がなかった。


 だってあたしの隣には、恐ろしく目立つ男がいる。


 もし今頭上をUFOが飛んでたとして。それに気付かない人でも、この男には気付く。


 行き交う人がアスマに視線を向ける。
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