【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
プロローグ 一夜限りの
 ふわふわと心地よい揺れを感じていたのに、突然止まってしまった。ギシッと何かが軋む音がする。

 重い目を開けると、そこは薄暗い部屋のベッドの上だった。
 
「起こしてしまったか」
「え……」
 
 上から覗き込むように、男性が低い声で話しかけてきた。

「ひゃっ……あ、あの?」
「ワインバーでボトルを頼んだのは覚えているか?」
「…………ハッ、はい!
覚えていま……あっ、隣にいた人?」
「そうだ」
「すみません、私……!」

 慌てて起き上がると、頭がクラっとした。

 どうしよう! 私、何やってるんだろう。
 ここって、この人の部屋? 
 ああ……隣に居合わせただけの人なのに!

 とりあえず、服は着ている。
 頭が少し痛くて妙に喉が渇いているけど、それ以外におかしなところはない。

 そのことに安堵し、強ばっていた身体から力が抜けた。

「君がワインバーで寝てしまって、マスターが困っていたんだ。とりあえずタクシーに乗せたんだが起きなくて」
「す、すみません……ゴホッ……」
「ここは俺の部屋だ。誰も邪魔しないからもう少し横になっておけ。俺は隣の部屋にいる」
「え……いや、でも」

 男性はサイドテーブルの下にある小さな冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出し、私に渡してくれた。
 
「飲め。脱水になりかけてるはずだ」
「ありがとうございます……」

 どうして喉がカラカラなのがわかったのだろう。
 親切な人だ。

 私はありがたくミネラルウォーターを一気に半分ほど飲み干した。
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