【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
森下先生と話す
「おつかれさん」

「お疲れ様です。ありがとうございました」

 予定していた脳動脈瘤の手術を終え、前立ちをしてくれた森下先生とシャワーを浴びる。

 難局をくぐり 抜けた開放感、ペアを組んだドクターとの連帯感。何ものにも変え難いひと時だ。

 だが大して時間はかけられない。
 オペ終了直後に患者の家族には会ったものの、正式な説明はこの後に控えているのだから。

「けど先生、腕上げたなー! 
めちゃくちゃ早かったよな」

「いつと比べてるんですか」

「大学院の初期の頃?」

 それは初心者マークを付けていても、前立ちすらできなかった頃じゃないか。

「一応、専門医取ったんですけど……」

「ああ、そうだったな」

 既に院も卒業したし、専門医の資格も取得した。
 オペのスピードアップ? 出来て当たり前じゃないか。

「そうだ、今度の学会、先生も行くんだよな?」

「パシフィコですか? 行きますね」

「研修医を連れていくつもりなんだ。ちょうど今来てるやつは、脳外に入局予定だからさ」

 ラッキーなやつだな。
 大きな学会の時期にローテーションして来るなんて。

「先生はポスター? オーラル?」

「オーラルです。パネルディスカッションなので」

「は? ………………マジ?」

「はい」

 俺もパネルディスカッションでアクセプトされた時はさすがに驚いた。

 今回の日本脳外科学会総会という大きな学会において、一般演者としてはおそらく一番大きなセッションだからだ。会場はもちろんメイン会場の大ホール。

「し、信じられん……。それ役職者クラスだろ? 
そういえば先生って、どこに通ったんだっけ」

 それは博士論文のことか?

「『The Lancet Neurology』」

「ひッ……ランセット……? 
ハハハ……。これだから出来るやつってやなんだよな。
インパクトファクターいくつだよ。
エリート街道まっしぐらだな」

「たまたま運が良かっただけです」

「……はぁ。まあいい。俺はポスターだ。
メイン会場、見に行くよ」

「ありがとうございます」

 手早く体を洗い終え、スクラブに着替える。
 髪はすぐに乾くよう、俺も森下先生も短髪だ。
 ここにドライヤーなどないからな。
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