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 私、伊原叶恋の両親は小さな会計事務所を営んでいる。

 母が同級生の父との間に私を身ごもったのは、大学在学中のことだった。

 そのため母は、一年休学して私を出産した。
 出産後は学業に専念し、ちゃんと大学を卒業。
 卒業後は既定の修業期間を終え、父から遅れること一年、税理士になることが出来た。

 両親がさらに大手会計事務所で修業を積む間、私の面倒をみてくれたのは母方の祖母だった。

 生まれてからずっと祖母に育てられた私は、祖母たっての願いで、物心つく前から芸能事務所に所属していた。

 そして小学4生の時受けたオーディションで、約1000人いた応募者の中からある役を勝ち取った。
 それが『クッキングアイドルかれん』だったのだ。
 
 それから私は学業と仕事を両立させた。
 地元大阪から、週末になると新幹線で上京し、収録を済ませる。
 祖母はもちろんその全てに付き添ってくれた。

 中学二年生も終わりという頃になり、私は選択に迫られた。
 子供向け番組である『クッキングアイドルかれん』を演じて5年。私はもう子役という年齢を卒業しようとしていた。

 制作側からも契約満了の通達が届き、大手芸能事務所からは移籍のオファーが来ていた。

 受け入れるのであれば、芸能コースのある東京の高校へ進学しなければならない。

 私は迷っていた。このままなんとなく、芸能界に進んでいってもいいのだろうかと。

 クッキングアイドルを続けてこられたのは、祖母が喜んでくれるから。
 そして何より、仕事で忙しい両親が、録画した私の番組を見ることを楽しみにしていてくれたからだ。
 ただそれだけのために頑張っていたにすぎない。
 自分の意志で芸能界に残りたいと思ったことは一度もなかった。
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