【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「はい、誠仁館医科大学脳外科医局、伊原が承ります」
『もしもし? 汐宮と申します』
「汐宮様、お世話になっております」
『……? あなた、誰かしら?
菜々……川崎さんは?』
「川崎は院内回りに出ております。
私は本日から勤務している伊原と申します。
よろしければご用件を承りますが……」
『ああ、新人秘書さんなのね。
私は医局員の汐宮の母です。
息子に何度も連絡しているんだけど、なかなか電話に出なくて。
メッセージも既読になるのに返ってこないのよ』
「は、はい……」

 急いでボードを見ると、汐宮永真(しおみやえいま)という医師が確かにいる。この電話の方は汐宮先生のお母様なのか。

「それでね、今週の日曜日に当直が入っていないか知りたいの」

 日曜日。勤務予定表には日曜日の枠がない。
 診察や手術がないわけだから当然か。

 私は今月の病棟当直とオンコール表を確認した。
 汐宮先生の当直日は縦に水曜日と第3日曜日だった。そのままをお母様に伝えする。

「そう……。ということはうちの当直にも入っていないし、今週の日曜日はフリーよね!」
「え」

 そうなの? そういうことなの?

 たとえばデートの約束とか、プライベートなことはこちらではわからない。

 うちの当直という言葉の意味もよくわからないけど、フリーと決めつけてしまっていいのかしら?

 ところが、汐宮先生のお母様は、とても納得したようで「ありがとう! これで話を進めることができるわ!」と言って電話を切ってしまった。

 菜々ちゃんから聞いていた『かかってくる電話のパターン』のどれにも当てはまらないイレギュラーな電話内容だったので、正しい対応ができたのか全く自信がない。
 汐宮先生を探して、お伝えした方がいいのだろうか。

 ただ、緊急性を感じる内容とは思わなかったので、とりあえず菜々ちゃんの帰りを待つことにした。

 しかし10分後、事態は思わぬ展開になる。


 ◇ ◇ ◇
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