【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「見ての通り、何もないんだ」

「本当ですね……」

 もう何度も来ているのに、叶恋は寝室とリビングダイニング以外の部屋を初めて見た。

 ここは7階建ての7階部分ワンフロアで、基本的には4LDKだ。
 寝室と何も置いていないフローリングの部屋が3つ、フードパントリーが1つ。
 その横にはランドリールームがあり、全てキッチンの裏導線になっている。

「広いなーと思ってはいたけど、本当に広いですね、ここ……」

「仕事を始めたら引越しは面倒だろうと思って、最初からワンフロア買って、部屋も多めに設計してもらった」

「それ、大は小を兼ねる的な……」

「ああ、それだ」

 叶恋が「ざっくりすぎる……」と、俺の説明に呆れている。

 ここを購入した7年前は、結婚して家族を持つなんて考えてもみなかった。

 ところが、母親が「ちゃんと設計士さんと話し合って、いずれ家族が増えてもいいように設計してもらいなさい!」と言うので、そのまま設計士に伝え、丸投げしたのだ。

「でもここ、主婦目線で見たらすごく動線がいいです。キッチンを中心に動きやすいので」

「そうなのか?」

 なら丸投げしてよかったな。ただ……

「ここ、もう7年住んでるから、叶恋が気になるなら水回りとかリフォームすることも出来るが……」

「いえ! リフォームなんて必要ないくらい綺麗ですよ。そもそもメインのバストイレ以外使ってないですよね?」

 確かに使っていない。
 俺一人生活するなら、ワンルームで十分なのだから。

「月1で清掃業者には入ってもらってる」

「なら水回りは大丈夫だと思います」

「そうか。空いている部屋は好きに使ってくれていい。ただ、寝室は一緒だからな」

「う……は、はい」

 これから夫婦になるのだから当然のことなのに、赤い顔をしている叶恋が可愛い。

 ……疲れているだろうか?

 横浜から帰ってすぐ運動会があって、今日の顔合わせだ。イベント続きで休む暇がなかった。

 だが、叶恋が欲しい。せっかく二人っきりになれたのだから。
 寝室に連れていこうか……
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