【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「かれ……」

「寝室も、見ていいですか?」

「え、あ、ああ……もちろんだ! これからは叶恋の寝室にもなるんだからわざわざ聞かなくていい」

 よし。叶恋から言ってくれるなんてラッキーだな。

 寝室に入り、叶恋がクローゼットを開けようとして、俺を振り返った。
 
「……見ちゃったらまずいものはないんですね?」

「……」

 何かあったか? いや、ないはずだ。多分……。

「ここを開けたら推しのグッズを集めた祭壇があるとか」

「ないっ! あるわけないだろう! 第一その推しは――」

 叶恋なんだから。……そう言いかけて思いとどまった。
 危ないところだった。

「推しは……誰なんですか? 気になります」

「いや……その……」

 開けかけたクローゼットから手を離し、叶恋が俺の元へやってくる。
 
「……私、少しはその人に似てますか?」

「へ?」

「だって……妬けますよ。最初は相手が芸能人なら別世界の人だし、気にならないと思ってたんです。
でも、永真さんにとって、その推しさんは特別なんだと思うとやっぱり複雑で……。
ずっと彼女がいないって言ってたその間も、永真さんの心の中にはその推しさんが居たんですよね。
そう思うと、どんな人か知りたくて」

 叶恋が妬く? 
 俺が推しているという相手に?

 まさかそんな風に思っていたとは。
 少し口を尖らせて、目線をそらしながらボソボソと話す叶恋が可愛すぎる。

「ハァ……まいったな」

「え……あ、ごめんなさい。無理に問い詰めるつもりは」

「いや、そういう意味じゃなくて。
これを言うのはさすがに恥ずかしくて、一生言うつもりはなかったのだが」

「ご、ごめんなさいっ」

「違う。その…………叶恋なんだ」

「ん? 私? ……ってどういうこと?」

 いきなり自分の名前を言われて、頭にハテナがたくさんついている叶恋に、俺は観念して打ち明けることにした。


 ◇ ◇ ◇
< 154 / 182 >

この作品をシェア

pagetop