【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
エピローグ 甘い時
 松浦課長との話を終え、私は永真さんのマンションに向かった。
 いつものように晩御飯を食べながら、永真さんに今日あったことを話している。

「永真さん、陽介のこと、動いてくださってたんですね。それに黒川先生まで……」

「勝手をして悪かった。
だが、もう二度とあの男を叶恋に近づけることがないようにしたかったから」

「すみません。ありがとうございます……」

「それより処女食いって……想像の斜め上を行くクズっぷりだな。
しかも盗撮。
あの男、立派な犯罪者じゃないか」

「はい……被害にあった女性たちのことを思うと……」

 正直、話を聞いた時は複雑だった。

 結論だけ見れば私だけ逃れられたのだ。
 陽介の魔の手から。

 父の病気がなければ、私も他の女の子達と同じ結末だったのだろう。皮肉な話だ。

 それにあの時は辛かったけど、そのおかげで永真さんに会えた。

 やけになって一夜限りの関係を持ったのに全然嫌じゃなくて、むしろ幸せだと感じた。

 そして今は、一生をこの人と共にしたいと思うほど愛している。毎日とても幸せだ。

 でも、被害者の女の子達は……。
 
「また何か考えているのか?」

「……私だけ運良く逃れられたのかと思うと……」

「ひょっとして、罪悪感を持ってるとか言うのか? 
その女たちに」

「……」

「そんなの一切持つ必要ない。
悪いのは全てあの男。
叶恋が悪いわけでもなんでもないんだ。
叶恋だって被害者だ。
何もなかったとはいえ、精神的苦痛を受けたのは間違いない」

「そう、ですけど……」

「いや、何もなかったわけじゃないのか……」

「え?」

 何もなかったことは永真さんが一番よくわかっているはず。だって永真さんが初めての相手だったんだから。

 すると、永真さんが立ち上がり、テーブルのこちら側にまわってきた。

「あのクズ男のことだ。何もしていないなんて有り得ない。ここは? キス、したのか?」

 そう言って私の顎をクイッと上げ、親指で唇に触れた。

「正直に言え」

「え……い、や、その」

「ひょっとして、最後までいってなかっただけで、もっと先にも……」

「まさか! キスだけです!」

「……」

「そ、それもエイシンさんとするようなキスじゃなくて、チュッて触れるだけの」

「チュッ!?」

 眉を釣り上げる永真さん。
 いやいや、待って。
 触れるだけのキスをしただけで、怒られるようなことは何もしてないのに!
 しかも、永真さんと出会う前の話だし。
 今さらだよ、今さら。
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