【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「伊原叶恋」
「は、はい……」

 有無を言わさず連れてこられたのは、脳外科医局がある研究棟の階段室だった。
 
「俺はお前を信用して連絡先を渡したんだが」
「ど、どこにも漏らしていませんよ?」
「そうじゃない! 連絡するって言ったよな?」
「……言いました。その、いろいろと立て込んでいたんです……」
「ほう……いろいろとねぇ」

 ほ、本当にいろいろあったのよ。
 あなたに初めて会った日から、この2ヶ月の間に!

 
 ――私たちが初めて会ったのは、今から2ヶ月前の7月に入った頃だった――


 ◇ ◇ ◇

――7月初め――

「叶恋、明日は久しぶりに出かけてきたら?」
「え? どうしたの?」
「ずっとお父さんと双子の世話ばかりで、最近どこにも行けてないじゃない」
「でもお父さんのリハビリがあるし……」

 父が脳梗塞で倒れたのは4ヶ月前のこと。
 それから私は会社を辞め、父の看病と双子の世話に明け暮れていた。
 当然のことながら、友達や彼氏にも会えていない。
 
「せっかく双子がサマーキャンプにいっているんだもの。明日くらいゆっくりしてよ。ちょうど週末だし、お母さん、お父さんの病室に泊まっちゃおうかと思って」
「え、本当に!?」

 父の病室は個室だから、ポータブルベッドを入れてもらえば泊まることも可能だ。

 仲のいい夫婦だけど、入院中の今はなかなか会うことができない。母の仕事が面会時間内に終わらないからだ。
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