【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 久しぶりに会社の近くのカフェで待ち合わせる。

 あのキュンとなるような優しい笑顔に早く会いたかった。

 会っても父の病状や、ネガティブな話はしないでおこうと思っている。そんな重い話をしたところで、いくら優しい陽介でも困惑するだろうと思ったからだ。

せっかく会うなら、楽しい話がしたい。
願わくば日頃の家事や看病から距離を置き、今日だけは陽介に癒されたいと思っていた。

 ところが、そんな私の願いは一瞬で打ち消されてしまった。
 カフェに現れたのは、陽介一人ではなかったのだ。

「叶恋……久しぶりだね」
「陽介さん……あの……?」
「伊原先輩、お久しぶりです!
お元気そうで良かった~」
「あ、うん……理沙ちゃんも」

 久しぶりに会った陽介の横には、受付の後輩である山本理沙がいた。

 ハキハキとものを言う理沙は、入社して受付に配属されるなり、その人懐っこさと大胆な物言いで社の看板娘のような存在になった。

 たまに空気を読まないところがあるけれど、華やかな美人なので何をしても許されていた。
 たとえば今のように……。

 明らかにデートの待ち合わせだとわかるのに、陽介に付いてくるなんて普通じゃ有り得ない。
 理沙は私たちが付き合っていることを知っているはずだから。

 二人は私の前の席に並んで座った。

「伊原先輩、単刀直入に言わせてもらいます。
私たち、付き合っているんです」
「え?」
「この人、自分では言えないだろうからと思って、今日は一緒に来ました」
「な、なに言って……」

 陽介と付き合っているのは私だ。
 なのにどういうこと?

 陽介を見ると、きまりの悪そうにしている。
 本当に理沙の言う通りなの?
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