【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 カウンター席のみの店内は薄暗く、バーカウンターを照らす5つのペンダントライトがやけに眩しく感じられた。
 奥の席では一組のカップルがいちゃいちゃとくっつきながら話をしていた。
 女は入口に近い席に座っている。

「いらっしゃいませ。もうすぐラストオーダーなんですがよろしいでしょうか?
閉店が1時になります」

 初老のマスターが声をかけてくる。

「かまいません」

 俺はカップルと女の間の席に座った。

「シャンパンをグラスで」
「本日はブーブクリコのご用意がございます」
「じゃあそれと、少し腹にたまるものを……」
「生ハムメロンか、少しお待ちいただければピザマルゲリータをご用意できますが」
「どちらもお願いします」
「かしこまりました」

 そう言って、マスターは女の前にワイングラスを置き、白ワインのボトルを手際よく開け、トクトクとついだ。
 そのボトルを用意してあったワインクーラーに入れ、彼女の前のカウンターに置く。
 そして俺の前には細長いシャンパングラスを置き、ブーブクリコを注ぎ入れ、奥の厨房へと消えていった。

「……この時間から、ボトルで……」
「え?」

 マズい! 心の声が漏れてしまった。

「い、や、すまない。閉店までそう時間がないのに気になって……。口を出すことではなかったな」

 通りすがりの赤の他人なのに。

「……少なくともボトルがあれば、急き立てられるように追い出されることはないかと思って」
「え……?」
「でもそうですよね。遅くなったら迷惑だし、残しちゃったらお店の方に申し訳ないか。……あの」
 
 女が真横から俺の目を見た。

「よろしければ、白ワインもいかがですか?
これ、手伝っていただけませんか?」

 泣き笑いのように微笑む女。
 俺はその時になって初めてまともに女の顔を見た。
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