【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 丸い小さな顔に、零れ落ちそうな大きな瞳。
 今は泣きはらして充血しているけれど、俺はこの目に既視感を覚えた。

 どこで? どこで彼女と会ったんだろう……?

 泣きすぎて鼻は真っ赤なままだ。
 しかし頬は透けるように白い。
 それもどこかで見た気がするのに思い出せない。

「あ、ああ……じゃあこれを飲み終わったら……」
「良かった! ……そうですよね。私ったら後先考えずにボトルで頼んじゃって……」
「いや! お、俺は知らないが、ワインが好きでボトル一本なんてあっという間というなら、何の問題も」
「ワイン、初めて飲むんです」
「はぁ?」
「看板の雰囲気から、ここがBARだということはわかったんですが、ワインバーだとはわからなくて」

 ああ、なるほど。穴が開くほど近づいて見ていたが、コンタクトレンズが取れたから、結局見えていなかったんだな。

「ロスヴァスコスのソーヴィニヨンブランか」
「ご存じなんですか?」
 
 店頭で買えば、そう高くないワインだ。ここでの価格はわからないが、少なくともあのマスターは、何も知らなさそうな女性に高いワインを薦めたわけではないようだな。

「柑橘系を感じさせる果実風味と酸味のバランスが良くて、飲みやすいワインだ」
「そうなんですね。良かった……あ、美味しい」

 余程ワインが苦手でない限り、万人受けするワインだ。この反応は想定内。

 しかし、ワインだけか?
 何かアテになるようなものは頼まなかったのか?

 そこへマスターがフードを持ってきた。

「おい、アテもなく飲むのは体に悪い。生ハムとメロンは食えるか?」
「え、はい……でも、それは申し訳ないです」
「そのワイン、シェアするんだろ? ならフードも」
「よろしければ取り皿をご用意しましょうか?」
「お願いします」

 なかなか気の利くマスターだ。

「あ! グラスも1つお願いします!」
「かしこまりました」

 こうして、何故かなりゆきでワインとフードをシェアすることになったのだが……。
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