【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「ふぁ~、めっちゃおいし……」

 まだ飲み始めて10分が経った頃だというのに、とろんとした目は今にも閉じそうだ。

 一杯目を飲み切ったところで、彼女はすでに酩酊状態。座っているのがやっとといったところだ。

 いや、弱すぎるだろう。
 よくこれでボトル一本なんて頼んだな。
 酔いたいのであれば、ある意味効率が良すぎる。
 俺は呆れと共にいっそ感心していた。

「マスターすみません。水を一杯……」
「おやおや……そうですね。無理なさらない方がいい」

 小声で会計はすべて俺に付けるように伝え、カードを渡すと、マスターが自ら残りのワインを俺のグラスに注ぎ足してくれた。

「待ち合わせされているようには見えなかったのですが……」
「外で見かけて……なんか放っておけなくて」
「親切な方だ。お客様はこの時間までお仕事だったんですか?」
「なんとか仕事を片付けて、隣でレイトショーを観てました」
「ひょっとしてスティルバーグ監督の?」
「そうです。今日初日で」
「実は私も、明日の日中に予約しているんです。
昔からファンでして」
「――私も観た!」

 突然彼女が叫んだ。
 いやいや、あれを観たとは言えないだろう。ほとんど泣いていたじゃないか。

 起きたのかと思われたが、意識があったのはその一瞬だけだったようだ。またうつらつらしている。
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