【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「ほう……では同じ映画をご覧になっていたんですね。偶然」

 そう言って、マスターはクスっと笑った。
 今ので、ここまでの流れを掴んだのだろう。
 映画館で泣き続けていたであろう女を、俺が追いかけてきたということを。
 間違ってはいないのだか、俺は別にストーカーをしているわけではない。

 そんな俺の顔を読み取ったのか「親切な方がいて良かったですね」と彼女に向かって言った。
 もちろん、ほとんど寝かけの彼女には何も伝わっていなかった。

「お嬢さん、どこかで見たことがあるのですが……」
「え?」
「あ、いや……店に入って来られた時から、既視感があったというか」

 まさか、マスターも同じことを思っていたのか?
 俺にしか聞こえないような声でこそっと話を続ける。

「芸能人かな。こんな若くて可愛らしい方、現実に知り合いはいませんからね」
「芸能人……」

 なるほど。全く違う境遇の二人が同時に既視感を覚えたんだ。芸能人という線はありえるかもしれない。

「実は俺も、どこかで見たことがあるような気がしたんです」
「あ、うちの娘たちが見ていた番組かも……。
もう遠い昔のことですから定かじゃありませんが。
教育テレビだったと思います」
「あっ……」

 そうだ。マスターのヒントで思い出した。
『クッキングアイドルかれん』のかれんにそっくりなのだ。
 まさか本人ではないと思うが、あのかれんを大人の女にしたら、きっとこんな感じになるだろう。
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