【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 汐宮先生は少し遅れてやってきた。
 チラッと目が合ったけれ、私がいる教授や医局長などの役職者のテーブルには座らず、若手ドクターのテーブルに座った。

 最初は緊張していたけれど、黒川教授が私に気を遣って喋りかけてくださるので、とても居心地のいい宴席だった。

「伊原さんは鹿島准教授の紹介だったね」
「はい。鹿島先生には誠仁館医療センターに父が入院していた時、お世話になりました」

 そう、私が医局秘書になったのは、父の主治医の鹿島先生の推薦だった。


 ◇ ◇ ◇


 父が退院して一ヶ月後の受診時のこと。

「異動が決まりましてね、誠仁館医療センターでの診察は今日が最後になるんですよ」
「異動! どちらに行かれるんですか?」
「大学の医局人事で、誠仁館医科大学病院の方に戻ることになりました。9月から新教授のもと新しい体制になり、私は……ゴホン、准教授になることになりまして……」
「准教授! それはおめでとうございます!」
「ありがとうございます。それで、伊原さんの今後なんですが、引き続き私が大学病院の方で診させていただくか、もしこちらの方が慣れていていいということであれば、信頼できる先生をご紹介しますが、どうされますか?」

 鹿島先生は、どちらでも大丈夫ですよ、と微笑みながら言った。
 すると、父が言ったのだ。
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