【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 俺は呼んでもらったタクシーに、前回同様叶恋を抱きあげ乗り込んだ。そして行先を告げる。

 タクシーの中でも叶恋は全く起きる気配がなかった。
 今日が初日だと言っていたし、気が張っていたのだろう。それがアルコールで緩んでしまったってとこか。
 まぁ元々酒に弱いってのもあるだろうけど。

 こいつには出会いから手を焼かされているな。
 上岡が言う通り、今までどんな女にも興味がなかったのだが……。

 伊原家の前にタクシーを停める。

 叶恋が帰ってくるのを待っていたのだろうか。
 門と駐車場を照らすライトが煌々とついていた。

 門から玄関までの段差には、明らかに後から取り付けられた手すりが見える。
 駐車場には国産のワンボックスタイプの車が駐めてあり、その横に小学生の男の子が乗りそうな自転車が二台、縦に並べて置かれていた。

 帰りは歩くつもりで清算を済ませた。タクシーを降り、叶恋を再び抱き上げる。

 時刻は21時30分。玄関先に娘を届けるだけなんだから、常識的な時間だろう。

 医局員の一人として秘書を送り届けただけのことだ。怒られるいわれはない。むしろ感謝されてもおかしくないと思う。

 あの一夜のことを知られたらそうもいかないだろうけど。

 インターホンを鳴らすと「はーい」という声が聞こえた。男の子の声だ。例の弟か? まだ起きているのか?

「おかあさん、かれんがでっかいおじさんにおひめ様だっこされてる!」
「かれんがでっかいおじさんにおひめ様だっこされてる!」

 同じ声が二つ。言ってることがかぶっている……。

「こ、こんばんは。誠仁館医大の……」
 
 名乗ろうと声を出したが、ブチっと音がしてインターホンが切れた。
 玄関の明かりがついたと思うと、男の子が二人飛び出してきた。
 後を追うように母親らしき人が現れる。

「かれん!」
「かれん!」

 またかぶってる。すごいな、双子……。
 
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