【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「どうやら察したようだな。
今日一日、恋人役をやってくれ」

「無理です! 話が違います! 
今日スイーツのお店に行くんじゃなかったんですか?」

「後で連れて行ってやるよ。
でもまずは目の前の問題を片付けてからだ」

 目の前の問題って、それはあなたの問題であって、私には全く関係のないことじゃない。

「酔ってるお前を、二度も運んでやったんだがな」

「うぅ……そ、それは感謝してますけど……」

「俺のマンションにも泊めてやったし。
まああれは対価をいただいたけど」

 そう言って、ニヤッと笑う汐宮先生。

「た、た、た、対価って……」

「それにお礼がしたいと言っていたじゃないか」

「い、言いましたけどね。
恋人役をするなんて言ってませんよ?」

 それとこれとは別だと思います。
 もちろん一夜を共にしたのも別の話よ!

「お前が俺の当直情報をリークしなかったらこんな面倒なことにはならなかったんだ」

「言いがかりですよ~」

 でもたしかに、あの電話を取ったのが菜々ちゃんだったら、きっと瞬時に理解して「予定があるかもしれない」くらいのことは言えたのだろう。

「でも、でも、私、今日はこんな服で来てますし、彼氏のお母さんに会うような恰好じゃないですよ」

 白の半袖Tシャツの上にお尻の下までくる長さの黒のノースリーブロングパーカーを着て、テロッとしたモスグリーンのロングスカートを履いている。
 お腹周りはもちろんゴムだ。
 パーカーでしっかりお腹が隠れていて、甘味処をハシゴすることにも対応済。
 そして靴は季節を先取りしたハーフブーツを履いてきた。
 どう考えても、恋人のお母さんに初めて会うような恰好ではない。

「なら、服をかえればいい」

「はい?」

「うちの母親は女さえ連れてくれば服装なんてこだわらないと思うが、叶恋が気にするなら着替えればいい」

 着替えればいいって、また家に帰るの? 
 いや、帰ったとしても、お母様にご挨拶するのにふさわしい服なんかないんだけど。

「もし偽装恋人を引き受けてくれたら……」
 
 ……引き受けてくれたら?
 
「双子をUSパークに連れて行ってやろう」

「USパーク!?」

 司馬と生馬の大喜びする顔が浮かんだ。
 なんてところを突いてくるんだ。
 そんなことを言われたら――。

「うぅ………………やります」

「フッ……よし。じゃあ着替えに行くか」

 この人、完全に私の釣り方を心得ているな。
 でもこんな美味しいエサをぶら下げられたら、釣られてしまっても仕方ないと思う。
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