【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 だけど、服をかえるってどういうこと?

 疑問を抱きつつ連れて行かれのは、百貨店の高級婦人服売り場だった。

「行きつけの店はあるか?」

「いえっ! こんなところで買ったことありません!」

 私の服はほとんどがファストファッション。
 少しまともなスーツやワンピースでも、このフロアにあるようなお店で買ったことはない。
 貸衣装か何かと思っていたのに、買うんだ! と思うと、心臓がバクバクしてきた。

「ならどこでもいいか」

 と言って、エスカレーターを降りてすぐの店に入ってしまった。

 このお店は知っている。
 一点一点手作業で丁寧に縫製されていて、いわゆるお嬢様ラインと呼ばれる洋服が並んでいるところだ。

 知ってはいるが、実際に見たことがあるわけではなく、雑誌の特集で見たことがあるだけだった。

 こんなところで買うの? 
 まだお給料も入っていないのに、私に買える?

「いらっしゃいませ。どういったものをお探しでしょうか?」

 黒の上品なワンビースを着た店員さんが迎えてくれる。にこやかに対応してくれる店員さん自身も、とても品があって所作も美しい。

「母親に会う。
それらしい服を選んでくれ。
そのまま着て帰る」

 実に簡潔に汐宮先生が答えた。「ああ、できるだけ急いでくれると助かる」と言葉を添えて。

「かしこまりました。ではお嬢様こちらへどうぞ」

 え? え? ふつうはここで予算を聞かない?

 バックヤードにいた店員さんまで出てきて、店内では総出で私の体にワンピースを当てだす。

「お嬢様は色白でらっしゃるから、どのお色もお似合いですわ」
「こちらのピンクベージュのワンピースはローウエストになっておりまして、裾部分にシフォンジョーゼットを重ねております。色目は抑えていますが華やかな印象に映りますね。ノースリーブのワンピースですので、パッと明るい印象になるこのオペラピンクのカーディガンを羽織られたらよろしいかと」

「もしくはこちらのミントグリーンのニットワンピースはいかがでしょう。ボディスはタイトですが、スカート部分がふわっと膨らんだ型になっておりまして、大変着やすく、人気があるんですよ。」

 次から次へとワンピースの説明がなされる。
 こういう時は店員さんの言うことを素直に聞いておくものだ。その道のプロなのだから。

 私はその二点を持ってフィッティングルームに入っていった。
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