【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 足早に歩きながら、汐宮先生のご実家情報を説明される。
 汐宮家は大学病院の隣の市に、汐宮総合病院という大きな病院を経営している。
 汐宮先生はそこの次男として生まれた。
 兄弟は7歳離れたお兄さんが一人。

 汐宮総合病院の現院長はお父様で、病院は消化器内科医をしているお兄さんが継ぐことになっている。

 お兄さんには奥様と4歳になる息子さんがいるのに、次男は31歳になっても結婚相手がいない。
 そのため心配した母親が、医局に電話をかけてきてまで見合いをセッティングしようとしたということだった。
 なるほど。長男夫婦が順調なだけに、次男にも早くいい相手をといった親心だったのね。

「兄貴に嫁と息子までいるっていうのに、なぜ俺が結婚を急がなければならないのかわからん」

 たしかに。家としてはすでに後継ぎとその次の代までいる状況だ。

 それに男性の31歳なら、そこまで急ぐような年齢でもない。女性であっても、今や晩婚の時代。31歳ならまだまだ出会いがありそうなものだけど。

 ただ、母親として息子に相手がいないことを心配する気持ちも、わからなくはない。

「結婚しないとは言ってない。
だが今、見合いをしてまで相手を探そうとは思わない。どうせ断ることになるんだ。だったら最初から合わない方が相手にも失礼がなくていい。
付き合い始めた相手がいると言えば、母親も無理に見合いを遂行しようとは思わないと思ったんだ。
ところが……」

「付き合い始めたというその相手を一目見たいと」

「まぁ、そういうわけだ」

 お見合い相手にどんなお嬢様を用意していたのかわからないけれど、私でいいのだろうか。
 お母様も誰でもいいってわけではないと思う。

 汐宮先生ならもっと適役で、ほかに恋人役を頼めそうな人がいそうなのに。

 それに……。

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