【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「先生、私を偽恋人としてお母様に紹介することでお見合いを回避するつもりなのはわかりました。
ではこの偽装関係の解除はどうするおつもりですか? 
期間とか、理由とか」

 そうだ。そこを確認しておかないと。
 少ししたら別れたことにするのかしら。

「それは……何とかする」

「何とかって、アバウトですね」

「どうせ、お前も今相手がいないじゃないか。急ぐ必要はないだろう?」

「う……」

 確かにそうですけど。

「それとももう新しい相手ができたのか?」

「で、できてませんよ?
できるわけないじゃないですか。そんな簡単に」

 陽介はこの歳にして初めてできた彼氏だったのに。

「まあ、お前はできないだろうな」

「なんですか、それ。ちょっと失礼じゃないですか」
 
 自分だって今恋人がいないから私に頼んでいるくせに。「お前にはできない」なんて、なに呪いみたいなこと言ってるんですかー!
 まったく、ひどい言いようだ。

「じゃあ、俺が振られたことにする」

「私が悪役ということですか?」

「うっ…………お、俺が振ることにする」

「そうしてください。先生が振ってください。そして理由も考えてくださいね」

「わかった……」

 たとえ今後会うことがないとしても、私から振るなんて、生意気な女だと思われるのは嫌だ。

 ちなみに私との出会いは、事実をほぼそのまま伝え、ボロが出ないようにすることにした。

 ワインバーで隣の席になり、同じレイトショーを観ていたことで意気投合した。

 その後私が医局秘書になったことで偶然再会し、運命を感じて付き合うことになったと。

 運命って……実際は偶然が重なっただけなんだけど。

 そうこうするうちに、もうレストランの個室は目の前。

 さあ、久しぶりの演技の始まりだ。

 ーーーー私の役は『汐宮永真の恋人』。
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