【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「悪かったな、落ち着かない食事で……」
お兄さん一家が帰り、食事の後、お母様とも解散した。私たちは現在汐宮先生のマンションまで帰ってきている。
せっかく買っていただいた服だけれど、そのままでは家に帰ることができない。
着ていった服に着替えないと、両親が怪しむからだ。
帰りの車の中の汐宮先生は、心ここにあらずといった感じで会話がほとんどなかった。やっと喋ったのがこの一言。
「いえ、楽しかったですよ。お母様は楽しい方でしたし、お兄様夫婦も素敵で、一真君は可愛いし。
双子の小さい時を思い出しました。
でもあんな感じで良かったのかと、ちょっと心配です。私たち、きっと付き合っているようには見えなかったと思いますよ?」
お母様には、永真のことをくれぐれもお願いね、と言われたけれど。
「実際のところ、再会したところなんだ。母親も、時系列通りであれば、交際を始めたところだと理解するだろう。それで充分。当分は見合いなんて言い出さないさ」
「……だといいですけど」
正直なところ、私もお母様のことは特に気にしていない。汐宮先生の言う通り、きっとこれからの伸びしろを期待してくださったと思う。
でも、気になるのは後から来られたお兄さん一家だ。一家が来られてから、汐宮先生の雰囲気がガラッと変わってしまった。一気に無口になったのだ。
京香さんは、汐宮先生と同級生だと言っていた。
普通に考えれば、二人は仲が良いはず。
でも、汐宮先生の雰囲気からはそんなふうに見えなかった。兄夫婦との間に壁を感じたのだ。
それは何かから自分を守るような、そんな壁だ。
おそらく、私の知らない何かがあるのだろう。
あの夫妻と汐宮先生との間に。それは何?
そして私と京香さんの雰囲気が似ていたことも、やっぱりどうしてもひっかかっている。
同じブランドの服を着ていたのだから、雰囲気が似てしまうのは当然なのかもしれない。
私の雰囲気は作られたもの。
頭の先から足の先、バッグに至るまで、偽恋人用に準備されたものだ。
そのブランドを決めたのは汐宮先生。
最終的に着ていく服をピンクの服に決めたのも汐宮先生。
それが最初から京香さんを意識したものだとしたら――。
「あの」
「…………なんだ?」
「……いえ」
これは私が踏み入っていいことではない。
過去、京香さんとの間に何かがあったのだとしても、私には関係のないことだ。
「……そうだ、スイーツ!
お腹いっぱいだけど、スイーツは別腹ですよね!
着替えも終わったことだし、どこへ行きましょう?」
「なんだ、俺より行く気満々だな。
たしかに腹がいっぱいだが、双子に土産を買う約束もしたことだし……そろそろ行くか」
私は「京香さんは、先生の元カノですか?」と聞きかけた言葉をぐっと抑え込んだ。
お兄さん一家が帰り、食事の後、お母様とも解散した。私たちは現在汐宮先生のマンションまで帰ってきている。
せっかく買っていただいた服だけれど、そのままでは家に帰ることができない。
着ていった服に着替えないと、両親が怪しむからだ。
帰りの車の中の汐宮先生は、心ここにあらずといった感じで会話がほとんどなかった。やっと喋ったのがこの一言。
「いえ、楽しかったですよ。お母様は楽しい方でしたし、お兄様夫婦も素敵で、一真君は可愛いし。
双子の小さい時を思い出しました。
でもあんな感じで良かったのかと、ちょっと心配です。私たち、きっと付き合っているようには見えなかったと思いますよ?」
お母様には、永真のことをくれぐれもお願いね、と言われたけれど。
「実際のところ、再会したところなんだ。母親も、時系列通りであれば、交際を始めたところだと理解するだろう。それで充分。当分は見合いなんて言い出さないさ」
「……だといいですけど」
正直なところ、私もお母様のことは特に気にしていない。汐宮先生の言う通り、きっとこれからの伸びしろを期待してくださったと思う。
でも、気になるのは後から来られたお兄さん一家だ。一家が来られてから、汐宮先生の雰囲気がガラッと変わってしまった。一気に無口になったのだ。
京香さんは、汐宮先生と同級生だと言っていた。
普通に考えれば、二人は仲が良いはず。
でも、汐宮先生の雰囲気からはそんなふうに見えなかった。兄夫婦との間に壁を感じたのだ。
それは何かから自分を守るような、そんな壁だ。
おそらく、私の知らない何かがあるのだろう。
あの夫妻と汐宮先生との間に。それは何?
そして私と京香さんの雰囲気が似ていたことも、やっぱりどうしてもひっかかっている。
同じブランドの服を着ていたのだから、雰囲気が似てしまうのは当然なのかもしれない。
私の雰囲気は作られたもの。
頭の先から足の先、バッグに至るまで、偽恋人用に準備されたものだ。
そのブランドを決めたのは汐宮先生。
最終的に着ていく服をピンクの服に決めたのも汐宮先生。
それが最初から京香さんを意識したものだとしたら――。
「あの」
「…………なんだ?」
「……いえ」
これは私が踏み入っていいことではない。
過去、京香さんとの間に何かがあったのだとしても、私には関係のないことだ。
「……そうだ、スイーツ!
お腹いっぱいだけど、スイーツは別腹ですよね!
着替えも終わったことだし、どこへ行きましょう?」
「なんだ、俺より行く気満々だな。
たしかに腹がいっぱいだが、双子に土産を買う約束もしたことだし……そろそろ行くか」
私は「京香さんは、先生の元カノですか?」と聞きかけた言葉をぐっと抑え込んだ。