【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「それは勝手に処分しちゃっていいのかしら?」
「もちろん。先生方も医局秘書があと片付けをしてくれるものだと思ってるから。
昼過ぎにはお掃除の人が来てくれるの。
汁物は水分を切っておけば、むこうで処理してくれるわ」

 それなら簡単なことだ。

「というわけで、医局には朝とお昼、それと私たちが退勤する夕方以降しかドクターはいないのよ。
こんな状況だから、このボードだけが頼りで……」

 菜々ちゃんはそう言いながら、壁一面がホワイトボードになっているところに目を向けた。

「これが脳外科の全ドクターの週間スケジュールね。
これを見て、外部からかかってきた電話を各ドクターに繋ぐの。
特に関連病院からの電話はなるべく迅速にね。
そして週間スケジュールの変更があったときは、速やかにこのボードを書き直すのも私たちの仕事よ」

 今聞いた業務はなにも難しいものではない。
 しかしこのボードにある全てのドクターの顔と名前を覚えるのは容易ではないだろう。

 私は巨大なボードを眺めながら、小さなため息を漏らした。

「あとは医局秘書の日々のルーティンね。
医局員宛の郵便は、一括して病院の地下にある郵便室に届くから、毎日午後3時頃になると取りに行くの。
これが郵便物受け取り用のエコバッグね」

 そういって、大きな白いエコバッグを見せられた。
 某大手衣料メーカーのものだ。

「毎週月曜は、そこに白衣も加わるの」
「白衣?」
「先生方の汚れた白衣をランドリー部に持っていって、洗濯が終わったきれいな白衣と交換するの。
スクラブとセットでパンツもあって、持てる重さじゃないからここにある台車を使ってね」
「ランドリー部はどこに?」
「病院の地下二階。一般の人は立ち入れないところだから、エレベーターも業務用。
今日が月曜日だから後で一緒に行って説明するね」

 なんとなくわかってきたけど、これは一般的な秘書とは全く違う気が……。
 ドクターのお世話係というか、雑用係というか、頭より体を使う仕事内容の方が多いのかもしれない。
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