【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「で、ここに余っている白衣があるから……叶恋ちゃんってユニセックスのMサイズくらいかな?
身長何センチ?」
「160㎝。多分Мサイズで大丈夫」
「じゃあこれね」

 菜々ちゃんが油性ペンで【脳外 伊原】と書いてくれた。

「私も着るの?」
「うん。まあここのスタッフってわかるように区別するだけのものだから、私は暑くて医局では脱いでるわ。病院の方へ行く時だけ着てる」
「たしかに、9月の初めにこれは暑いかも……」

 白衣はしっかりした厚みのある生地で作られている。
 でもせっかくだから、着させてもらうことにした。
 白衣なんて初めてでちょっとテンションが上がる。

「ふふふ……似合ってるよ。
慣れるまでコスプレみたいな気がしない?」
「プッ……たしかに」

 でも、医局秘書をするんだなぁ……という気がだんだんしてきた。

「あとは……今のところまだ教授秘書が決まっていないから、教授へのお茶出しとスケジュール管理でしょう?
それと、専門医の取得や更新の手続きがある先生の業績をまとめてあげたり、論文のために図書館で文献を取ってきたり……個人的なお願いをしてくる先生もいるわ」
「なんか……難しそう……」
「そうでもないの。自分でできる先生もたくさんいるから。
それに、全部引き受ける必要はないから。
こちらが忙しければ断っても大丈夫」

 なるほど。線引きをして、余裕がある時だけ個人的な仕事を引き受けたらいいのね。

 新人の私にその線引きができるかは微妙だけど、そこは菜々ちゃんのやり方を見ながら学ばせてもらおう。
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