【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「京香に何を言われたか知らないが、あいつのことは無視していい」

「……何も言われていませんよ」

 病棟へ上がるエレベーターの中、俺は京香の非礼を詫びるつもりでいた。
 
「だが何か言われたんだろう?」

「いえ、京香さんは汐宮先生のことを褒めていました」

「は?」

「女の子には塩対応だけど、本当は思いやりのある人で、面倒見もいいし、頼りになるし、誰よりも優しい人だと」

「な……」

「叶恋ちゃんに誤解されていないか心配なの、とおっしゃってました」

「チッ……そうきたか……くそっ」

「褒めちぎっていたんですよ?」

「……ムカつく。褒めるフリした牽制だろ、それ」

「やっぱりそうでしたか……」

 叶恋が俯きかげんにため息を吐く。

「悪い。まさかあいつがここまで来るとは思っていなかったから……」

「私は別に。偶然お会いしただけですし、その……本当に私たちがそんな関係というわけではありませんから」

 偽恋人関係だからといって「私の方があなたの彼をよく知っている」と匂わされるのはいい気がするものではないだろう。

 それに、そんな関係ではないといいながらも、笑顔は引きつっている。
 俺としてはそこで「ムカついた!」と怒ってくれてもいいのだが。

「……怒ってくれていいのに……」

「え?」

「いや………………叶恋、今日は何か予定はあるか?」

「今日、ですか?」

「説明がしたい。少しの時間でいいから」
 
 俺の気が済まないんだ。

 叶恋の肩に手を置き、頼み込むように身をかがめると、叶恋が再びため息を吐いた。
 
「……わかりました」
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