【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 食事が終わる頃、汐宮先生の携帯が鳴った。

「はい……いや、今日はオンコールの日じゃないんで…………俺が行きます。飲んでません。…………はい、了解です」

 病院から呼び出しかな。
 そういえばあの朝も、今思えば病院からの呼び出しだったんだわ。

「悪い、今から前立ちすることになった。
今日はオンコールじゃなかったんだが、同期の原田の嫁が産気づいたらしい。代わりに入ることになった」

「原田先生の! わぁ……いよいよ生まれるんですね!」

 原田先生は愛妻家で、いつも医局に寄っては、私たち秘書に赤ちゃんのエコー写真を見せてくれていた。
 ちなみに奥様は私の前任の医局秘書だったらしい。

「あ、じゃあ私はこれで失礼します。
すぐに片付けますね」

「それは俺が帰ってからやっておく。
オペ出しは30分後だから、叶恋を降ろしてから病院へ向かう」

「まだ遅くないし、私は歩いて帰ります。前は、こんなに近くだと知らなかったので。
歩きなら近道できますからね。
ここ、すぐに片付けますね。
あとどれくらい時間ありますか?」

「長くて5分」

「5分……じゃあ急がなきゃ」

 食洗機を使わせてもらおうか。
 それにしてもタイトだな。

「なら……鍵を渡しておく」

 そう言って、汐宮先生はコーヒーメーカーの横にあったBOXからカードキーを取り上げた。

「出る時にこのカードキーをドアノブの上の黒い部分にかざしてくれ。
ちなみに入る時は四桁の暗証番号も必要だ。
……イエス・キリストの誕生日。覚えておいてくれ」

「え……これお預かりしていいんですか?」

 合鍵って、そんなに簡単に渡していいの?

「別に盗られて困るものもないし」

「何も盗りませんよ!?」

「なら問題ない」

 汐宮先生はニヤッと笑って私の頭をポンポンと撫でた。
 その手はスルッと私の頬に下がり、自然と上を向かされる。

「え……」

 気づけば少し屈んだ汐宮先生にキスされていた。
 触れるだけのキス。
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