【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「もー、信じられない!」
「うっ……」
「何も考えずにカゴに入れるなんて!
今すぐ調理するなら、シールを貼っている見切り品の方が断然お得!
使う日と消費期限を考えてカゴに入れないと。
買い物の基本ですよ、基本!
それに高けりゃいいってものでもないんです。
食品の状態を見て、ハリ・ツヤ・色をチェックしたら、大抵はこの『店長のおすすめ!』シールが貼られている商品が一番コスパが良かったりするんです」
「はぁ」
……なるほど。散々学生時代から勉強してきたし、日々進化する医療機器やら医療技術を学んでいる俺だが、世の中にはまだまだ知るべきことがあったらしい。
「勉強になった」
「……考えてみたら、こんな庶民的なお買い物の仕方、先生には必要なかったですね。すみません……」
「いや、そんなことはない。
俺はその……生活能力は低い方だから」
「そんなことはないと思いますよ。
自炊をしなくても生活していける状況なんでしょうから」
つまり、俺は経済的に恵まれているから自炊をしなくてもやっていけていると言うことか?
果たしてそれが、生活能力があるということになるのだろうか。
「まあ……自分でも、もう少しまともな食生活をするべきだという自覚はある。
料理でも始めてみるか……」
「ふふふ……無理にとは言いませんが、たまにスーパーに寄って、時間があるときはお鍋一つで出来る料理から始められてもいいかもしれませんね。
楽しいですよ、お料理」
「……叶恋が教えてくれるのか?」
ここで叶恋が作ってくれてもいいのだが。
「私がですか? 私はごく普通の料理しかできませんけど」
「たまにでいい……」
「はい……では、先生のお時間がある時に」
「……」
叶恋は、母親に代わって主婦業をしていたと言っていた通り、包丁さばきも慣れていて、さくさくと料理を仕上げていった。
しかしキッチンに並び、野菜を洗う手伝いをしていると、なぜか叶恋の調理姿に違和感を感じた。
どう考えても、なにもおかしいところはないのだ。
だが何かが引っかかる。なんだ?
叶恋の作った料理は肉じゃがにだし巻き玉子、海鮮サラダに味噌汁。全て俺のリクエストによるものだ。
「美味い!」
「良かった……。肉じゃが、思ったより味が染み込みましたね。時間がかけられなかったので心配だったんです」
「あ」
その正体がなんなのか、叶恋が食べ始めてからようやく気付いた。
「どうしたんですか? 卵の殻でも入ってましたか?」
「いや、入ってない。このだし巻きも最高に美味い」
「ありがとうございます!」
「それより、叶恋は左利きなのか?」
叶恋は今、左手で箸を持っている。
「はい。父に似たんだと思います」
「でもさっき、右手で包丁を持ってなかったか?」
そうだ。さっき感じた違和感はそれだ。
初めて会ったあのワインバーでは、確かに左利きだった。
ところが、母親と会った時はごく普通に右手で箸を持っていたのだ。
あまりにも自然だったので、左利きだということをすっかり忘れていた。
「うーん。私の場合……両利きと言っていいのかな。
お箸はどちらの手でも持てます。
気を抜いたら左で持つことが多いですね。
でも包丁は右なんです。
あ、ハサミは左の方が安定していますね」
「……母親と会った時に右手で箸を持っていたのは?」
「その方が普通に見えていいかと思って。
昔って、無理やり右利きに矯正されることが多かったんです。みんなと同じが当たり前。あと左利きだと何かと不便という理由で。だから父は矯正されて右利きになっていました。
でも、私の年代や、もっと若い年代は、左利きも個性の1つなんですよ。あえて矯正しない人も増えてきていて。
実は私もそうだったんです。
育ててくれた祖母は、右利きに矯正しようとしましたが、母が個性だからそのままがいいと主張したんです。
ですが……ちょっと理由があって、右手も練習することになりました。
今ではどちらも使えて便利だと思ってます」
それは、俺が覚えているかれんのプロフィールそのものなのでは? まさか本当に叶恋がかれんなのか?
そういえば、ワインバーのマスターも言ってたよな。
似ている。
確かに似ているんだ、彼女に。
あまりにも突拍子もない考えが再び蘇り、心臓がバクバクと動き出した。
だがさすがにそこまでの偶然はないだろうと思い直した。
あんなに毎日夢中になっていた『かれん』がここにいるなんて。
◇ ◇ ◇
「うっ……」
「何も考えずにカゴに入れるなんて!
今すぐ調理するなら、シールを貼っている見切り品の方が断然お得!
使う日と消費期限を考えてカゴに入れないと。
買い物の基本ですよ、基本!
それに高けりゃいいってものでもないんです。
食品の状態を見て、ハリ・ツヤ・色をチェックしたら、大抵はこの『店長のおすすめ!』シールが貼られている商品が一番コスパが良かったりするんです」
「はぁ」
……なるほど。散々学生時代から勉強してきたし、日々進化する医療機器やら医療技術を学んでいる俺だが、世の中にはまだまだ知るべきことがあったらしい。
「勉強になった」
「……考えてみたら、こんな庶民的なお買い物の仕方、先生には必要なかったですね。すみません……」
「いや、そんなことはない。
俺はその……生活能力は低い方だから」
「そんなことはないと思いますよ。
自炊をしなくても生活していける状況なんでしょうから」
つまり、俺は経済的に恵まれているから自炊をしなくてもやっていけていると言うことか?
果たしてそれが、生活能力があるということになるのだろうか。
「まあ……自分でも、もう少しまともな食生活をするべきだという自覚はある。
料理でも始めてみるか……」
「ふふふ……無理にとは言いませんが、たまにスーパーに寄って、時間があるときはお鍋一つで出来る料理から始められてもいいかもしれませんね。
楽しいですよ、お料理」
「……叶恋が教えてくれるのか?」
ここで叶恋が作ってくれてもいいのだが。
「私がですか? 私はごく普通の料理しかできませんけど」
「たまにでいい……」
「はい……では、先生のお時間がある時に」
「……」
叶恋は、母親に代わって主婦業をしていたと言っていた通り、包丁さばきも慣れていて、さくさくと料理を仕上げていった。
しかしキッチンに並び、野菜を洗う手伝いをしていると、なぜか叶恋の調理姿に違和感を感じた。
どう考えても、なにもおかしいところはないのだ。
だが何かが引っかかる。なんだ?
叶恋の作った料理は肉じゃがにだし巻き玉子、海鮮サラダに味噌汁。全て俺のリクエストによるものだ。
「美味い!」
「良かった……。肉じゃが、思ったより味が染み込みましたね。時間がかけられなかったので心配だったんです」
「あ」
その正体がなんなのか、叶恋が食べ始めてからようやく気付いた。
「どうしたんですか? 卵の殻でも入ってましたか?」
「いや、入ってない。このだし巻きも最高に美味い」
「ありがとうございます!」
「それより、叶恋は左利きなのか?」
叶恋は今、左手で箸を持っている。
「はい。父に似たんだと思います」
「でもさっき、右手で包丁を持ってなかったか?」
そうだ。さっき感じた違和感はそれだ。
初めて会ったあのワインバーでは、確かに左利きだった。
ところが、母親と会った時はごく普通に右手で箸を持っていたのだ。
あまりにも自然だったので、左利きだということをすっかり忘れていた。
「うーん。私の場合……両利きと言っていいのかな。
お箸はどちらの手でも持てます。
気を抜いたら左で持つことが多いですね。
でも包丁は右なんです。
あ、ハサミは左の方が安定していますね」
「……母親と会った時に右手で箸を持っていたのは?」
「その方が普通に見えていいかと思って。
昔って、無理やり右利きに矯正されることが多かったんです。みんなと同じが当たり前。あと左利きだと何かと不便という理由で。だから父は矯正されて右利きになっていました。
でも、私の年代や、もっと若い年代は、左利きも個性の1つなんですよ。あえて矯正しない人も増えてきていて。
実は私もそうだったんです。
育ててくれた祖母は、右利きに矯正しようとしましたが、母が個性だからそのままがいいと主張したんです。
ですが……ちょっと理由があって、右手も練習することになりました。
今ではどちらも使えて便利だと思ってます」
それは、俺が覚えているかれんのプロフィールそのものなのでは? まさか本当に叶恋がかれんなのか?
そういえば、ワインバーのマスターも言ってたよな。
似ている。
確かに似ているんだ、彼女に。
あまりにも突拍子もない考えが再び蘇り、心臓がバクバクと動き出した。
だがさすがにそこまでの偶然はないだろうと思い直した。
あんなに毎日夢中になっていた『かれん』がここにいるなんて。
◇ ◇ ◇