黒澤くんの一途な愛
「ああ。そのために、ここで待ってたんだからな」
黒澤くんが私に、ヘルメットを投げる。
何とかそれをキャッチしたけど、ヘルメットを手にした私は戸惑ってしまう。
「えっと……確認なんだけど、そのバイクに乗るの?」
「当たり前だろ?」
今さら何を言って……というような目で、私を見る黒澤くん。
「でも、私バイクとか今まで乗ったことなくて。落ちたりしないかな?」
バイクの後ろに乗せてもらうなんて人生で初めてのことで、少し怖気づいてしまった。
「大丈夫だよ」
手に持っていたヘルメットを、黒澤くんに奪われる。
「だから、お前は安心してこれ被っとけ」
黒澤くんは、私の頭にヘルメットを被せた。
「それ、自分でつけられるか?」
「つ、つけられるよ!」
からかうような口調の黒澤くんに、唇を尖らせる。
確かに、バイクに乗るのは初めてだって言ったけど。
いくら私でも、ヘルメットのつけ方くらいは分かる。
カチャッとバックルの締まる音がすると、黒澤くんが私に微笑んだ。
「うん、上出来」
私が被ったヘルメットの上に、ぽんと手をのせる黒澤くん。