黒澤くんの一途な愛


ていうか、黒澤くんってやっぱり黒色が好きなのかな?


今、彼が私に見せてくれた折りたたみ傘も、前に乗せてもらったバイクも黒だったから。


「ねぇ。黒澤くんは、何色が好きなの?」

「ん? 俺は、黒かな。あと……緑も」


やっぱり……!


「お前は?」

「えっと、私は……」


校門へと向かって歩きながら、口を開きかけたそのとき。


「りっくん!」


私たちの会話に割り込むように、可愛らしい声が耳に入った。


「南実!」


校門のそばに、黒澤くんの幼なじみ・南実さんが立っていた。


ここで初めて会ったときは、花が咲いたような可愛らしい笑顔が印象的だった彼女だけど。


今日の南実さんに笑みはなく、彼女のくりっとした大きな瞳は揺れている。


「南実お前、そんな顔してどうしたんだよ」

「りっくん……」

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