黒澤くんの一途な愛


私は、目を見開く。


辺りは街灯もほとんどなく薄暗いなか、黒澤くんはなぜか地面にしゃがみ込んでいたから。


「く、黒澤くん!?」


彼はスマホのライトを地面に当て、どうやら何かを探しているようだ。


「ねぇ、黒澤くん。どうしたの?」

「……」


集中していて私の声が聞こえていないのか、黒澤くんからは返事がない。


もしかして、何か落としてしまったのかな?


「黒澤くん、落とし物? だったら、私も探すよ」


私が前に家の鍵を落としてしまったときも、黒澤くんは嫌な顔ひとつせず、探すのを手伝ってくれたから。


「ねぇ、何を探してるの?」


私がスマホのライトを地面に当て、その場にしゃがみ込もうとしたとき。


「あ、あったぞーー!」


探し物を見つけたらしい黒澤くんが、それを手に取り掲げてみせる。

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