〜Midnight Eden〜 episode2.【蛍狩】
『静かに。話を続ける』
騒然とする室内が係長の一言で沈黙を取り戻す。再び上野一課長が口を開いた。
『次はファイル1を開いてくれ』
ファイル1は先週5月21日に稲城《いなぎ》市で起きた中年男性殺人事件のデータだった。
殺害されたのは健康食品会社勤務の尾野章介、四十一歳。発見時、尾野は大久保と同様に全裸にポリ袋とガムテープを巻きつけられ、寝袋に入った状態で遺棄されていた。
被害者の身元が即座に判明したのは遺体と共に寝袋に詰め込まれた財布に残された免許証だ。
狛江市で見つかった大久保義人も、彼の所持品と思われる財布や交通系ICカードが寝袋に納まっていた。両事件とも所持品には被害者のスマートフォンがなく、現場周辺からも発見されていない。
(二つの事件ともに所持品にスマホがない。犯人が持ち去ったのならスマホには犯人を特定できる何かのデータが入っていた?)
スマートフォンには所有者の個性が出る。インストールしたアプリ、ネットの検索履歴や閲覧履歴、トークアプリやメールの会話は趣味嗜好や交遊関係を可視化する。
SNSのフォロワー欄を見るだけでも交遊関係の把握には充分だ。
第一の被害者の尾野も第二の被害者の大久保も身体にスタンガンの痕跡が見られた。どこかで気絶させられ、殺害現場に運び込まれたのだろう。
両被害者の体型は尾野が169センチ62キロ、大久保が172センチ65キロ。
普通体型の成人男性を運ぶのは一苦労だ。ましてや、死後硬直の最中ではかなりの労力になる。
複数犯の可能性もあり、おそらくひとりは運転免許を所持している。
『稲城と狛江の犯行手口の一致から、本件を連続殺人事件として、稲城及び狛江を管轄地域とする所轄と警視庁が合同で捜査をする』
捜査の割り振りが決定した。真紀の班は大久保の人間関係の捜査を行う鑑取《かんど》り担当だ。
大久保義人が所持していた交通系ICカードの利用履歴から事件前の彼の行動を辿る。
月曜から金曜まで毎日同じ時間帯に、自宅最寄りの新江古田駅と会社最寄りの新宿駅を行き来する典型的なサラリーマンは、何故か土曜日の午前11時に新江古田駅から大江戸線に乗り、新宿駅で下車している。
履歴は新宿駅で止まっているため、以降の足取りは不明。彼が休日に何の用があって新宿に出向いたのか、同居している親も知らないと言う。
騒然とする室内が係長の一言で沈黙を取り戻す。再び上野一課長が口を開いた。
『次はファイル1を開いてくれ』
ファイル1は先週5月21日に稲城《いなぎ》市で起きた中年男性殺人事件のデータだった。
殺害されたのは健康食品会社勤務の尾野章介、四十一歳。発見時、尾野は大久保と同様に全裸にポリ袋とガムテープを巻きつけられ、寝袋に入った状態で遺棄されていた。
被害者の身元が即座に判明したのは遺体と共に寝袋に詰め込まれた財布に残された免許証だ。
狛江市で見つかった大久保義人も、彼の所持品と思われる財布や交通系ICカードが寝袋に納まっていた。両事件とも所持品には被害者のスマートフォンがなく、現場周辺からも発見されていない。
(二つの事件ともに所持品にスマホがない。犯人が持ち去ったのならスマホには犯人を特定できる何かのデータが入っていた?)
スマートフォンには所有者の個性が出る。インストールしたアプリ、ネットの検索履歴や閲覧履歴、トークアプリやメールの会話は趣味嗜好や交遊関係を可視化する。
SNSのフォロワー欄を見るだけでも交遊関係の把握には充分だ。
第一の被害者の尾野も第二の被害者の大久保も身体にスタンガンの痕跡が見られた。どこかで気絶させられ、殺害現場に運び込まれたのだろう。
両被害者の体型は尾野が169センチ62キロ、大久保が172センチ65キロ。
普通体型の成人男性を運ぶのは一苦労だ。ましてや、死後硬直の最中ではかなりの労力になる。
複数犯の可能性もあり、おそらくひとりは運転免許を所持している。
『稲城と狛江の犯行手口の一致から、本件を連続殺人事件として、稲城及び狛江を管轄地域とする所轄と警視庁が合同で捜査をする』
捜査の割り振りが決定した。真紀の班は大久保の人間関係の捜査を行う鑑取《かんど》り担当だ。
大久保義人が所持していた交通系ICカードの利用履歴から事件前の彼の行動を辿る。
月曜から金曜まで毎日同じ時間帯に、自宅最寄りの新江古田駅と会社最寄りの新宿駅を行き来する典型的なサラリーマンは、何故か土曜日の午前11時に新江古田駅から大江戸線に乗り、新宿駅で下車している。
履歴は新宿駅で止まっているため、以降の足取りは不明。彼が休日に何の用があって新宿に出向いたのか、同居している親も知らないと言う。