〜Midnight Eden〜 episode2.【蛍狩】
九条は第一の被害者の尾野章介、第二の被害者の大久保義人、第三の被害者の池原秀樹の顔写真を見比べた。
『友達の借金背負ったり変な宗教に無理やり入会させられたりしそうなタイプ。押しに弱そうな顔だ』
「でしょう? これって偶然? ……主任、おはようございます」
「おはよう」
上司の小山真紀の席は美夜と九条の向かい側。九条がデスクから身を乗り出した。
『お子さんの具合は大丈夫ですか?』
「熱も微熱まで下がった。昨日途中で抜けてごめんね。今日は旦那が看てくれてる」
昨日は熱を出した次男の看病で真紀は午後に早退した。彼女の夫は、現在の官房長官である武田健造氏の甥。
どのような経緯で刑事が政治家の甥と結婚に至ったのか九条は気にしていたが、美夜は上司や同僚のプライベートには立ち入らない主義だ。
「で、二人して妙な顔してるね。何かあった?」
『神田が被害者の共通点を見つけたんですよ』
「これを見てください。被害者三人の外見的な特徴が似ているんです」
美夜は被害者三人の顔写真を真紀の前に並べた。彼女は第一の被害者、尾野章介を指差し、次に第二の被害者、大久保義人を指した。
「まず髪型の類似です。全員が黒髪に短髪。体型は多少の中年太りはあっても中肉、成人男性の平均身長並の中背、タレ目で、どちらかと言えば冴えない、押しに弱そうな顔立ちをしています」
「確かにここまで揃うとターゲットを絞って狙った犯行としか思えないね。それに大久保のツイッターに書かれたホタル……」
真紀は額に手を当てうつむいていた。もしや息子の風邪がうつって体調が優れないのだろうか。
美夜と九条が声をかけようとした矢先、彼女は顔を上げた。
「神田さんさっき、被害者の外見の特徴が似てるって言ったよね?」
「はい。被害者三人には似た特徴があります」
「……二人とも今から資料室行くよ」
サラリーマン殺人事件の捜査資料ならすべて手元に揃っている。
資料室に行かなければならない理由もわからず困惑の表情の美夜と九条は、真紀の後を追って資料室に向かった。
資料室の扉横の指紋認証装置に真紀が指を触れると、真紀の指紋を認知した装置が資料室のロックを解除した。
ロックが開いた扉から三人は室内に入った。書類ファイルが敷き詰められたスチール棚に囲まれた一角に、数台のパソコンがある。
『友達の借金背負ったり変な宗教に無理やり入会させられたりしそうなタイプ。押しに弱そうな顔だ』
「でしょう? これって偶然? ……主任、おはようございます」
「おはよう」
上司の小山真紀の席は美夜と九条の向かい側。九条がデスクから身を乗り出した。
『お子さんの具合は大丈夫ですか?』
「熱も微熱まで下がった。昨日途中で抜けてごめんね。今日は旦那が看てくれてる」
昨日は熱を出した次男の看病で真紀は午後に早退した。彼女の夫は、現在の官房長官である武田健造氏の甥。
どのような経緯で刑事が政治家の甥と結婚に至ったのか九条は気にしていたが、美夜は上司や同僚のプライベートには立ち入らない主義だ。
「で、二人して妙な顔してるね。何かあった?」
『神田が被害者の共通点を見つけたんですよ』
「これを見てください。被害者三人の外見的な特徴が似ているんです」
美夜は被害者三人の顔写真を真紀の前に並べた。彼女は第一の被害者、尾野章介を指差し、次に第二の被害者、大久保義人を指した。
「まず髪型の類似です。全員が黒髪に短髪。体型は多少の中年太りはあっても中肉、成人男性の平均身長並の中背、タレ目で、どちらかと言えば冴えない、押しに弱そうな顔立ちをしています」
「確かにここまで揃うとターゲットを絞って狙った犯行としか思えないね。それに大久保のツイッターに書かれたホタル……」
真紀は額に手を当てうつむいていた。もしや息子の風邪がうつって体調が優れないのだろうか。
美夜と九条が声をかけようとした矢先、彼女は顔を上げた。
「神田さんさっき、被害者の外見の特徴が似てるって言ったよね?」
「はい。被害者三人には似た特徴があります」
「……二人とも今から資料室行くよ」
サラリーマン殺人事件の捜査資料ならすべて手元に揃っている。
資料室に行かなければならない理由もわからず困惑の表情の美夜と九条は、真紀の後を追って資料室に向かった。
資料室の扉横の指紋認証装置に真紀が指を触れると、真紀の指紋を認知した装置が資料室のロックを解除した。
ロックが開いた扉から三人は室内に入った。書類ファイルが敷き詰められたスチール棚に囲まれた一角に、数台のパソコンがある。