〜Midnight Eden〜 episode2.【蛍狩】
たっぷりのフリルとレースがついた可愛らしいベッドにピンクの壁紙とシャンデリア、至るところに薔薇とレースのモチーフが散りばめられた室内は、まさにプリンセスに用意された部屋。
レースの枕に頭を沈めた夏木舞は裸の胸元の一部を片腕で隠した。仰向けに寝そべる舞の傍らで、バスローブを纏った男がスマートフォンを向けている。
「綺麗に撮ってね」
『わかってるよ。でもここからだと顔が写ってしまうかも』
「トリミングで切るからいいよぉ」
男が構えた舞のスマートフォンから連続してシャッター音が発射される。高画質のカメラで撮影された写真はパステルピンクのショーツだけを身につけた裸の姿。
ポーズやカメラの角度を変えて男に撮ってもらった写真は二十枚近くに及んだ。画像フォルダに並ぶ自分の裸の写真を見た舞は、満足げに微笑する。
「これでまたフォロワー増えるかなぁ」
『舞ちゃんを独り占めしたい僕としてはこういうエッチな写真は載せて欲しくないなぁ。こうやって相手を見つけているんだろう?』
「ツイッターで仲良くなってもリアルで会う人は少ないよ。そこはちゃんと選んでる。実際に会ってエッチした人は、うーんと、8人くらいかなぁ」
撮影された写真は舞のツイッターに載せるためのもの。舞にはツイッターのアカウントが二つある。
ひとつはプライベートな出来事を呟くための日常系アカウント、もうひとつはセクシャルな投稿を主にする裏アカウント。
日常系アカウントは〈まいまい〉、裏アカウントでは〈まいにゃん〉の名義を使用している。
どちらも本名からの派生ではあるが、まいにゃんのアカウントでは顔は非公開にしつつも、下着姿の写真や自慰動画をメインに投稿していた。
まいにゃんのフォロワー数は954人。九割が男性名義のアカウントだ。
一枚目は全裸で四つん這いになってカメラに尻を向ける自分の写真を選んでツイッターに投稿した。
二枚目は手で胸を隠した写真、三枚目は……と、卑猥な姿を晒した写真が次々と舞のツイッターに載せられていく。
投稿に【コメントくれた人、先着5人にDMで無修正の写真あげます♡】のメッセージを付ければ、モザイク加工のない無修正の裸の写真を求めて、我先にと競うように舞を賛辞するコメントの数が増えていく。
『ネットには変な男が多いからね。それと舞ちゃんは特別に可愛いから、電車での痴漢や盗撮には気を付けるんだよ』
「えぇー、舞にエッチなことしてる吉田さんが言っても説得力なぁーい」
男の名前は吉田豊、推定四十代。正確な年齢は知らない。
昨年の夏休み、東京ミッドタウンにひとりで買い物に出掛けた時に吉田に声をかけられた。
ナンパの類いは無視を決め込んでいるが、若くして死んだ吉田の妻と舞の容姿が似ていると語る吉田の寂しげな瞳に絆《ほだ》されて、彼をほうっておけなくなった。
吉田とは最初は月二回程度デートを重ね、五回目のデートで舞は吉田を相手に処女を捨てた。
舞と吉田の関係は恋人でも友達でもない。これは例えるなら擬似的な恋人ごっこ。
レースの枕に頭を沈めた夏木舞は裸の胸元の一部を片腕で隠した。仰向けに寝そべる舞の傍らで、バスローブを纏った男がスマートフォンを向けている。
「綺麗に撮ってね」
『わかってるよ。でもここからだと顔が写ってしまうかも』
「トリミングで切るからいいよぉ」
男が構えた舞のスマートフォンから連続してシャッター音が発射される。高画質のカメラで撮影された写真はパステルピンクのショーツだけを身につけた裸の姿。
ポーズやカメラの角度を変えて男に撮ってもらった写真は二十枚近くに及んだ。画像フォルダに並ぶ自分の裸の写真を見た舞は、満足げに微笑する。
「これでまたフォロワー増えるかなぁ」
『舞ちゃんを独り占めしたい僕としてはこういうエッチな写真は載せて欲しくないなぁ。こうやって相手を見つけているんだろう?』
「ツイッターで仲良くなってもリアルで会う人は少ないよ。そこはちゃんと選んでる。実際に会ってエッチした人は、うーんと、8人くらいかなぁ」
撮影された写真は舞のツイッターに載せるためのもの。舞にはツイッターのアカウントが二つある。
ひとつはプライベートな出来事を呟くための日常系アカウント、もうひとつはセクシャルな投稿を主にする裏アカウント。
日常系アカウントは〈まいまい〉、裏アカウントでは〈まいにゃん〉の名義を使用している。
どちらも本名からの派生ではあるが、まいにゃんのアカウントでは顔は非公開にしつつも、下着姿の写真や自慰動画をメインに投稿していた。
まいにゃんのフォロワー数は954人。九割が男性名義のアカウントだ。
一枚目は全裸で四つん這いになってカメラに尻を向ける自分の写真を選んでツイッターに投稿した。
二枚目は手で胸を隠した写真、三枚目は……と、卑猥な姿を晒した写真が次々と舞のツイッターに載せられていく。
投稿に【コメントくれた人、先着5人にDMで無修正の写真あげます♡】のメッセージを付ければ、モザイク加工のない無修正の裸の写真を求めて、我先にと競うように舞を賛辞するコメントの数が増えていく。
『ネットには変な男が多いからね。それと舞ちゃんは特別に可愛いから、電車での痴漢や盗撮には気を付けるんだよ』
「えぇー、舞にエッチなことしてる吉田さんが言っても説得力なぁーい」
男の名前は吉田豊、推定四十代。正確な年齢は知らない。
昨年の夏休み、東京ミッドタウンにひとりで買い物に出掛けた時に吉田に声をかけられた。
ナンパの類いは無視を決め込んでいるが、若くして死んだ吉田の妻と舞の容姿が似ていると語る吉田の寂しげな瞳に絆《ほだ》されて、彼をほうっておけなくなった。
吉田とは最初は月二回程度デートを重ね、五回目のデートで舞は吉田を相手に処女を捨てた。
舞と吉田の関係は恋人でも友達でもない。これは例えるなら擬似的な恋人ごっこ。