〜Midnight Eden〜 episode2.【蛍狩】
「男の人は独占欲強いよね。ホテルで撮った写真載せると、今日は誰とエッチしたの? ってフォロワーが絶対聞いてくるの」
『当たり前だよ。皆、僕だけの舞ちゃんでいて欲しいんだから』
舞は自分の身体と年齢に需要があると理解していた。どんな男も女の若い肌は好物だ。
今日の写真には、吉田が胸や太ももにつけたキスマークが写り込むように身体の角度や手の位置を計算した。
舞の写真はいいねやリツイートでネットの海に拡散され、明日にはまたフォロワーが増えているだろう。今朝投稿した自慰動画で今日もフォロワーが20人増えていた。
「あーあ。愁さんも舞が可愛いこと知ってるのに、なんで振り向いてくれないのぉ?」
『舞ちゃんが大人になるのを待っているんじゃないかな。僕が言えたことではないけど、舞ちゃんは未成年だから。愁さんの立場もあるよ』
「舞はいつでも愁さんウェルカムしてるのにさ。一緒に寝てもキスしかしてくれないの。こんなに可愛いのに」
誰に可愛いと言われるよりも、愁に可愛いと言われたい。誰に好かれるよりも愁に好かれたい。
SNSで承認欲求を満たしても、愁以外の男に抱かれても、埋まらない心の空虚。
『舞ちゃんの初恋が実って欲しいと本当に思っているよ。だけど愁さんと結ばれたら、僕とはもう会ってくれなくなるのは寂しいな』
「舞も吉田さんとはずっとお友達でいたいよ」
髪を撫でる吉田の優しい手つきは、愁の手つきを思い出す。幼い頃に父親にこうして頭を撫でてもらう経験が舞にはなかった。
舞を確かな愛情で包み込んでくれたのは兄の伶と愁だけ。養父の夏木十蔵は甘やかしてはくれても、伶や愁のような愛情は感じない。
舞と吉田は大きなベッドでけだるげな時間を共有する。写真を画像加工アプリで加工していた舞のスマホに、トークアプリの新着のメッセージが届いた。
送り主は同級生の須藤亜未だ。
[O橋さんに数学と英語の回答送ってもらったよ~]
O《オー》橋とは、同じクラスの大橋雪枝のこと。舞は週末用の課題に出された数学と英語のテストプリントを、最初から雪枝の回答をアテにして一切手を付けていなかった。
(この答え丸写しすれば宿題終わりっ)
亜未が送ってきた数枚の画像は大橋雪枝の字で書かれたプリント用紙の写真だ。これからも雪枝には役立ってもらおう。
下の人間は頂点に立つ人間の手足となって働く。歯向かう人間は金で上手くコントロールして操ればいい。
それが、舞が養父の夏木を見て学んだ生き方だった。
『そろそろシャワー浴びて支度しようか』
「えー。時間まだ平気でしょぉ?」
上半身を起こした吉田の腰に後ろから抱き着いた舞は、彼のバスローブの内側に片手を忍ばせた。そこに存在するモノに舞の手が触れると吉田は苦笑してかぶりを振る。
『こらこら。僕も若くないんだよ。二回目は腰も辛いんだ』
「こんな時だけオジサンキャラになるのずるいっ! シャワー浴びながらイチャイチャしよっ? ね?」
わざとバスローブをはだけさせて露出した胸元に吉田の視線が注がれる。若い女の張り艶のある肌は、雄を誘惑してやまない。
二人分のバスローブが床に散る。誰もいなくなった部屋に流れ続けるシャワーの水音のBGMには時々、男と女の情事の音が紛れていた。
どれだけ男を知っても埋まらない心の隙間。
いつになれば、少女は現実を知るのだろう。
身勝手な大人が作り上げた残酷で理不尽な現実を。
Act3.END
→エピローグ に続く
『当たり前だよ。皆、僕だけの舞ちゃんでいて欲しいんだから』
舞は自分の身体と年齢に需要があると理解していた。どんな男も女の若い肌は好物だ。
今日の写真には、吉田が胸や太ももにつけたキスマークが写り込むように身体の角度や手の位置を計算した。
舞の写真はいいねやリツイートでネットの海に拡散され、明日にはまたフォロワーが増えているだろう。今朝投稿した自慰動画で今日もフォロワーが20人増えていた。
「あーあ。愁さんも舞が可愛いこと知ってるのに、なんで振り向いてくれないのぉ?」
『舞ちゃんが大人になるのを待っているんじゃないかな。僕が言えたことではないけど、舞ちゃんは未成年だから。愁さんの立場もあるよ』
「舞はいつでも愁さんウェルカムしてるのにさ。一緒に寝てもキスしかしてくれないの。こんなに可愛いのに」
誰に可愛いと言われるよりも、愁に可愛いと言われたい。誰に好かれるよりも愁に好かれたい。
SNSで承認欲求を満たしても、愁以外の男に抱かれても、埋まらない心の空虚。
『舞ちゃんの初恋が実って欲しいと本当に思っているよ。だけど愁さんと結ばれたら、僕とはもう会ってくれなくなるのは寂しいな』
「舞も吉田さんとはずっとお友達でいたいよ」
髪を撫でる吉田の優しい手つきは、愁の手つきを思い出す。幼い頃に父親にこうして頭を撫でてもらう経験が舞にはなかった。
舞を確かな愛情で包み込んでくれたのは兄の伶と愁だけ。養父の夏木十蔵は甘やかしてはくれても、伶や愁のような愛情は感じない。
舞と吉田は大きなベッドでけだるげな時間を共有する。写真を画像加工アプリで加工していた舞のスマホに、トークアプリの新着のメッセージが届いた。
送り主は同級生の須藤亜未だ。
[O橋さんに数学と英語の回答送ってもらったよ~]
O《オー》橋とは、同じクラスの大橋雪枝のこと。舞は週末用の課題に出された数学と英語のテストプリントを、最初から雪枝の回答をアテにして一切手を付けていなかった。
(この答え丸写しすれば宿題終わりっ)
亜未が送ってきた数枚の画像は大橋雪枝の字で書かれたプリント用紙の写真だ。これからも雪枝には役立ってもらおう。
下の人間は頂点に立つ人間の手足となって働く。歯向かう人間は金で上手くコントロールして操ればいい。
それが、舞が養父の夏木を見て学んだ生き方だった。
『そろそろシャワー浴びて支度しようか』
「えー。時間まだ平気でしょぉ?」
上半身を起こした吉田の腰に後ろから抱き着いた舞は、彼のバスローブの内側に片手を忍ばせた。そこに存在するモノに舞の手が触れると吉田は苦笑してかぶりを振る。
『こらこら。僕も若くないんだよ。二回目は腰も辛いんだ』
「こんな時だけオジサンキャラになるのずるいっ! シャワー浴びながらイチャイチャしよっ? ね?」
わざとバスローブをはだけさせて露出した胸元に吉田の視線が注がれる。若い女の張り艶のある肌は、雄を誘惑してやまない。
二人分のバスローブが床に散る。誰もいなくなった部屋に流れ続けるシャワーの水音のBGMには時々、男と女の情事の音が紛れていた。
どれだけ男を知っても埋まらない心の隙間。
いつになれば、少女は現実を知るのだろう。
身勝手な大人が作り上げた残酷で理不尽な現実を。
Act3.END
→エピローグ に続く