姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
すべて話し終えた叶奈は、気になっていたことを尋ねた。
「あの、どうして譲さんが母が倒れたことをご存知なんですか」
「ああ、うちで働いてもらっているから」
「うち?」
「建設現場の近くにある、湯浅の事務所だ」
家事と店のことだけでも忙しい母が、よそで働いていたなんて知らなった。しかも、譲の勤め先だ。
叶奈は返事をするのも忘れて、茫然と譲の横顔を見つめた。
「そんな……」
頭がガンガンと痛み始めたので、両手で顔を覆う。
「知らなかった」
叶奈の様子が気になるのか、時おり譲からの視線を感じる。
「麻子さんからは内緒にしてくれって言われてたんだ。すまない」
うそをついていた叶奈が、譲を責められるわけがない。
「おそらく一日でも早く松尾家にお金を返して、君を自由にしたかったんだろう」
崇は播磨屋への援助だし、慰謝料や養育費を受け取らなかった麻子への気持ちだから返さなくていいと言っていた。
でも麻子にしてみれば、援助してもらった結果、叶奈が奈緒のスペアだと言われたことが許せなかったのだろう。
もしかしたら自分が崇を頼ったせいだと、思いつめていたのかもしれない。