姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
ピタリと着信音が止まった。
「恭介との婚約って、本当じゃないよね」
確認してくる譲の視線が痛い。
「はい。恭介さんは、姉のことが好きなので」
「ええっ?」
今度は崇がお驚きの声を上げた。奈緒が嫌がった見合い相手だと思っていたから、恭介の気持ちが信じられないのかもしれない。
「恭介さんは、姉との結婚を心から望んでおられます」
崇にも聞いてもらいたくて、叶奈は恭介の気持ちを代弁した。
「まさか」
崇はまだ半信半疑のようだ。
「私からお伝えするのはどうかと思うのですが、恭介さんのおじい様がご病気なので婚約者のフリを頼まれたんです」
これは松尾家と香川家の祖父母だけが約束していたことだから、崇がいるところで、きちんと説明した方がよさそうだ。
「これは姉が帰国するまでという約束です」
「そうか」
叶奈がうなずくと、譲が額に手を置いている。
なんだか悪いことをしたみたいで、叶奈はいたたまれなくなってきた。
そのとき、麻子の声が聞こえた。
「叶奈……」
「あ、お母さん、気がついた?」
「湯浅さんまで……」
叶奈は椅子から立ち上がって、麻子に顔を近づける。