姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「私、倒れちゃったんだ」
これまで聞いたことがないくらい、麻子の声は弱々しかった。
「無理ばかりするからだよ」
手をギュッと握ったら、なんだか泣きたくなってきた。
「私のために、働いてくれたんでしょ」
「あら、内緒にしてくださいって頼んだのに」
そう言って麻子が譲に目を向けたが、そこに崇もいると気がついたようだ。
「崇さん」
「心配したよ、麻子」
崇がベッドに駆け寄ってきた。
「どうしてこんな無理をしたんだ」
「だって」
麻子は自分に言い聞かせるように、ゆっくりと話しだした。
「たしかに、離婚した時はお金を受け取らなかったわ。あなたのことを忘れて、自分の力で人生を立て直そうと思っていたから」
「麻子」
崇はつらそうに眉を下げている。
「でも今回、あなたのお金を頼ったのは間違いだった」
「いや、播磨屋の力になりたいって援助を申し出たのは私だ」
「ありがたかったけど、現実を見て。叶奈は夢を犠牲にして、松尾の家に縛りつけられてしまっている」
「叶奈の夢?」
「大学を卒業したら、メルボルンに行くはずだったのに」
話し終えた麻子はホッと息を吐いた。崇は思い詰めた顔になっている。