姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
落ち込んでいる崇のことより、叶奈は麻子の体調が心配だ。
「お母さん、もう無理しないでね」
叶奈はこらえきれなくなって、ポロポロと涙がこぼれてきた。
「ごめんね。少しでもお金を返して、あなたを自由にできればと思ったんだけど」
「なんとかやってるから大丈夫。お母さんの気持ちだけで十分だよ」
奈緒への恭介の想いがわかったし、譲にこれまでの事情をきちんと説明できた。
叶奈はこれ以上、母に無理をさせたくなかった。
「松尾さん」
母子の様子を黙って見守っていた譲が、崇に声をかけた。
とても真剣な表情で、じっと崇を見つめている。
「土地代は私がお支払いします。叶奈さんを今すぐ自由にしていただけませんか」
「譲さん、それはダメ!」
思わず叶奈は叫んでいた。いくら譲が湯浅ホールディングスの御曹司といっても甘えられない。
「ご迷惑をかけるわけにはいきません」
「迷惑じゃないよ。君が恭介の婚約者のフリをしているのが我慢できないだけだ」
「だからって、大金なのに」
「ここは俺に任せてほしい」
「でも」
叶奈と譲が言いあっていたら、崇が間に割り込んできた。