姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
祖母と崇が並んで座り、テーブルの反対側に奈緒が座った。
麻子と叶奈は少し離れた位置に立って、座ろうかどうしようかと迷った。
叶奈には松尾家との血の繋がりはあるが、麻子はもう親族ではないという微妙な関係だ。
今日の話にどこまで立ち入っていいのかわからない。
家政婦が人数分の紅茶を淹れてきたタイミングで、奈緒の隣に椅子ひとつ分だけ空けて座った。
初めてこの屋敷に来たとき、十人は座れそうだと思っていたダイニングテーブルだ。
大人が五人集まっても、まだ余裕がある。
「奈緒、話してちょうだい。どうしてこんなことに」
琴子がこれまでの事情を尋ねても、奈緒は黙っている。
叶奈には、なにから話せばいいのか迷っているようにも見えた。
「ごめんなさい」
やっと謝罪の言葉だけ言うと、奈緒は横に座っている叶奈に顔を向けてきた。
「叶奈? なのね」
姉に名前を呼ばれたら、なんだか気恥ずかしい。
「はい」
「あなたにも迷惑かけちゃって、ごめんなさい」
そう言って奈緒はゆっくりと頭を下げた。とても美しい礼だ。
その優美な姿を目にすると、琴子にいつも比べられていたのもわかる気がした。
「気にしないでください。私にも事情があったから引き受けたんです」
金銭的な事情があったことまでは聞いていないのか、奈緒は少し首をかしげた。
「そんなことより、奈緒。お腹の赤ちゃんのお父さんは誰なの!」
琴子の声に、焦りがにじんできた。
「はっきりさせてちょうだい。場合によっては、相手に責任を」