姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「わかりません」
「は?」
「知らない人です」
奈緒は真正面から琴子を見て言い切った。
琴子は大きく目と口を開いたまま固まってしまっている。
どうやら崇は奈緒に、一夜の相手は見合い相手だったとは話してないらしい。いや、父親の口からはとても話せなかったのだろう。
崇がゴホンと咳払いしたら、琴子はハッと気を取り直したようだ。
「な、なんですって? もう一度言ってちょうだい」
「この子は、私の子です。私がひとりで育てます」
叶奈は口を挟みたくて、琴子と奈緒の顔を交互に見る。
きちんと話し合えば、皆が一番望んでいた答えにいきつくはずだ。
恭介のことを伝えたいけれど、この場で叶奈から口にしていい問題ではない。
まず本人同士が話し合うべきことだから、自分が出しゃばってはダメだと自重する。
また、玄関のチャイムが聞こえた。
「私が出よう」
家政婦に任せるのではなく、崇が立ち上がってダイニングルームから出ていった。
すぐに戻ってきた崇が当然のような顔をして、サラリと恭介の来訪を告げた。
「お母さん、香川君たちが来ましたよ」
叶奈も恭介が来るとは聞いていなかったので驚いた。
「今、取り込んでいるのよ。申し訳ないけどお帰りいただいて」
琴子が決めた見合い相手だというのに、今はそれどころではないようだ。
「そうもいきません。とても大切な方だちですから」
「大切な方たち?」
琴子は怪訝な顔をしているが、もしかしたらと思った叶奈は胸がドキドキしてきた。
「失礼します」
ダイニングルームに姿を見せたのは、叶奈の予想通り恭介と譲のふたりだ。