姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です


長身の若いふたりがダイニングルームに入ってくると一気に部屋が狭く感じられる。

「香川さん、突然どうなさったの。今日いらっしゃるってご連絡はなかったけれど」

琴子はなんとか表情を取り繕っている。

「奈緒!」

恭介は琴子どころではないようで、奈緒のそばに走り寄ってきた。
奈緒は椅子に座ったまま、ポカンと恭介を見上げた。

「この子が……ぼくの」

奈緒のそばにひざまずいた恭介は、感動したようにお腹を見つめている。

「どうして、あなたが」

奈緒はまだ信じられないのか、恭介の顔を見つめて茫然としたままだ。

「あの夜以来だね」

奈緒に話しかける恭介の声は、甘い響きを帯びている。

「僕が君の見合い相手、香川恭介だなんだ」

「えっ?」

奈緒はなんのことか、わかっていない顔をしている。

「君の、見合い相手だったんだ。黙っていてごめん」

「あなたは私が松尾奈緒だとわかっていたの?」

「ああ」
「本当に?」

奈緒はまだ信じられないようだ。




< 117 / 125 >

この作品をシェア

pagetop