姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
叶奈には、奈緒が手を取っていいのかどうか迷っているのがわかった。
「お姉さん、恭介さんを信じて」
叶奈が声をかけると、奈緒はコクリとうなずいた。
「さあ、行って」
叶奈がもうひと押ししたら、奈緒は恭介の手に自分の手を重ねる。
「奈緒さんをお借りします」
「よかったね」と伝えたくて、叶奈は恭介に向かって大きくうなずいた。
恭介も笑い返してくれた気がしたが、あっという間に奈緒の手を引いてダイニングルームから出て行ってしまった。
(幸せになって、お姉さん)
部屋の仲がシンと静まり返っている。
奈緒たちが出て行ってすぐ、今度は譲が琴子の前に立った。崇はちゃっかり麻子の横に座っている。
「突然、申し訳ございません」
「あなたは……」
「湯浅譲と申します」
名刺を取り出した譲は、琴子にきちっと挨拶をする。
「今日は、叶奈さんとの交際を認めていただきたいと思って伺いました」
「じ、譲さん!」
何も聞いていなかった叶奈は、いきなり何を言い出すのかと焦った。
「叶奈さんと、結婚を前提にしたお付き合いをさせてください」
そう言うと、譲は琴子に向かって頭を下げている。
奈緒と恭介が手を取って出て行ったショックに続いて、いきなり叶奈と譲の話だ。
琴子はさすがだった。いつも通りのシャンとした表情に戻っている。
受け取った名刺をじっと見つめてから、琴子はゆっくりと口を開いた。
「あなたは、湯浅ホールディングスの……」
「はい」
琴子が座るように促したので、譲は叶奈の隣に座った。
「どうして私に許可を? 叶奈は松尾家の子ではありませんよ」
冷めたい響きがあるが、当然のことだから叶奈も動じない。
「それでも、あなたの孫に変わりありませんから」
「孫……そうね、大事な孫ですね」
「あなたに認めていただきたいのです」