姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
琴子は叶奈に視線を向けてきた。
喜んでいるのか悲しんでいるのか、その表情からは判断できなかった。
「あなた方の未来に口を挟むことはいたしません。好きになさい」
弱々しくすら感じられる答えだった。それほど奈緒のことがショックだったのだろうか。
「ありがとうございます」
譲と叶奈は、琴子に頭を下げた。
「疲れました。皆さま、お引き取りください」
琴子が部屋にいる顔ぶれを見渡しながら告げる。お開きの宣言だ。
「お義母様」
その時、やっと麻子が口を開いた。
「あの頃のこと、お詫びしたいと思っておりました」
「麻子さん」
「当時は若すぎて、何も見えていませんでした。申し訳ございません」
「もういいのよ。今さら年寄りのことなんて気にしないで」
「娘たちが大人になって、やっとわかりました。松尾家の嫁として崇さんを支えていけるように、色々とおっしゃてくださっていたのですね」
そう言って麻子は立ち上がると、琴子に向かって深々と頭を下げた。
「ありがとうございました」
まだ琴子に表情はないが、こくりとうなずいた。
許すという意味なのか、水に流すということなのかは叶奈にはわからない。
ただ麻子はなにか感じ取ったようで、ゆっくり頭を上げると「失礼いたします」と言ってダイニングルームから出て行った。
その後を追うように、崇が続く。