姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
「こんにちは、叶奈さん」
「あ、湯浅さん。いらっしゃいませ」
夕食には少し早い時間だ。
「昼を食べそびれちゃって、軽くていいんだけど何かないかな」
「少しお時間いただきますが、おばあちゃんの明石焼はいかがですか」
「明石焼? 珍しいな、それにしよう」
「おばあちゃん、明石焼お願いしま~す」
叶奈が厨房に声をかける。
譲が食券を買っているが、もうすっかり慣れたようだ。
「これはおばあちゃんの特別メニューなんです」
「へえ」
叶奈が水を運んで半券を受け取ると、譲が尋ねてきた。
「今日は大将、お客さんなんだね」
店のスタッフや常連客は祖父のことを「大将」と呼んでいる。譲もそれに倣っているようだ。
「そうなんです。なんだか難しい顔をしているでしょ。ずっと話し込んでいるんです」
譲はチラリと奥の席に目をやっている。
いつもは厨房にいる祖父が、眉をしかめて座っている姿が珍しいのだろう。
「なにかあったのかもしれません。気になっちゃって」
叶奈はつい不安を口にしてしまった。