姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です


「何か困ったことがあったら、相談に乗るよ」
「ありがとうございます」

単なる社交辞令だとしても、譲の言葉はありがたかった。

「そういえば君は将来、この店を継ぐの?」

将来というくらいだから、叶奈は実際より幼く見られているようだ。
年齢までは話していなかったので、小柄でストレートのボブヘアの叶奈は高校生くらいに間違われていたもしれない。

珍しく他にお客さんはいないし、祖父も話し込んでいる。
母は出かけているから、少しくらいプライベートなおしゃべりをしても叱られないだろう。

「私、大学四年生なんです」
「え、そうなの? 妹と同じくらいかと思った」

叶奈の予想通り、譲は驚いた顔になる。
残念だが譲から見た叶奈は、女性というより妹的な存在のようだ。

「妹さんがいらっしゃるのですか」
「ひと回り年下の、高校三年生なんだ」

妹が十八歳だとすると、譲は三十歳くらいだろうか。
落ち着いた印象やスタッフとの会話から、もう少し年上かと思っていた。

「春から君は就職か……」

いかにも叶奈が店にいなくなるのが残念そうな口ぶりに思えた。
それを聞いて、叶奈はもう少し譲と話したくなってしまった。

「いえ、しばらくオーストラリアに行こうかと思っていて」
「え?」
「卒業まで手伝っているだけなので、ここで働くのもあと少しです」

つい『あと少し』を強調してしまったが、叶奈の言葉に譲がパッと反応した。

「オーストラリアのどこに?」
「メルボルンです」

メルボルンは古いヨーロッパ調の建築物があるかとおもえば、おしゃれなビーチもある。
それに治安もよさそうだしマーケットには新鮮な果物や野菜があふれていて、海外生活初心者の叶奈でも暮らしやすそうな街だ。

「あそこは住みやすい街だよ」
「叔父が日本食のお店で働いているので、ホームステイさせてもらえるんです」

「それなら安心だね」




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