姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
松尾家でしごかれた礼儀作法が役に立ったのはもちろん、松尾電機次期社長の崇から援護射撃もあったらしい。
崇にとっては奈緒も叶奈も大切な娘だと言ってくれたので、とてもありがたかった。
もっとうれしかったのは、湯浅家の人たちと会ったその日に、譲からエンゲージリングを贈られたことだ。
『これで安心だ』
なぜかそう言って、譲は叶奈の左手の薬指にダイアモンドの指輪をはめてくれた。
あの日、奈緒と恭介はかなり話し合ったようだ。
ふたりの結婚はすぐに決まった。ただし奈緒の出産があるので、入籍だけして式は来春になるそうだ。
ベビー連れの結婚式が、叶奈は今から楽しみだ。
恭介は「奈緒とは運命の出会いだった」と、譲に自慢してくるそうだ。
奈緒は勝手な行動をしまったことを祖父母や崇に謝り続けていたが、琴子も自分が奈緒の人生をコントロールしていたことを反省したという。
崇にいたっては麻子や叶奈と再会できたのだからと喜んでいるくらいだ。
恭介の祖父は結婚相手が奈緒になっても、松尾家の孫だからと鷹揚に答えてくれた。
琴子との約束さえ果たせればよかったのだろう。
容態にも大きな変化はなく、とにかく「ひ孫を抱くんだ」と気力に満ちているらしい。