姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
二月に入って、久しぶりに譲がやって来た。
建設計画が公式発表されてから、とても忙しかったのだろう。少し寝不足なのか、目元にうっすらとクマが見える。
少し遅い時間だから、コートを着ていても寒そうだ。
「お疲れさまです」
「今夜は冷えるね。温かいものがいいな」
譲の声に、いつもの艶がない。
「湯浅さん、少し風邪気味ですか?」
「このところ東京だったから、しゃべり過ぎたかな」
おそらく東京本社とこの街を行き来していたのだろう。
「ひとり分の寄せ鍋を作りましょうか」
「ありがたいけど、いいのかな」
「お任せください。食券は、鍋焼きうどんで大丈夫ですから」
「助かるよ」
特製の寄せ鍋を、ふうふう言いながらおいしそうに食べてくれた。
「ごちそうさま。元気が出たよ」
「よかったです」
生姜湯を運びながら、叶奈もホッとする。
お腹が温かくなれば、きっと風邪の引き始めにも効果があるだろう。