姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です
たった一杯の生姜湯にも、心を込めた。
「風邪の引き始めに効きますよ」
そう言って湯飲みを差し出したら、受け取ろうとした譲の手が叶奈の手に触れた。
「あ」
驚いた叶奈が湯飲みを落とさないよう、譲の大きな手が包み込んでくれる。
「す、すみません」
ゆっくり手を放しながら、譲が大丈夫だよと言うように笑顔を見せる。
その柔らかな微笑みに、叶奈は弱いのだ。
「もうすぐ卒業式だね」
「はい」
譲と会えなくなる日が、ぐんぐんと近づいている。
「卒業祝いに、どこかに行かないか?」
「えっと?」
思いがけない言葉に、叶奈は固まってしまった。意味がわからなくて、返事ができない。
「ずっと店でよくしてくれたから、そのお礼だよ」
「は、はい! ぜひ!」
これは誘われているんだとわかると、うれしすぎて大きな声で答えてしまった。
叶奈は恥ずかしさに赤面するが、譲は気にしていないようだ。
「いつも元気な顔を見せてくれたおかげで、こっちもがんばれたんだ。どこか行きたいところはないかな」
迷う間もなく、叶奈は大好きな場所を答えていた。
「海が見たいです」