姉の代わりにお見合いしろ? 私に拒否権はありません。でも、あこがれの人には絶対に内緒です



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叶奈が譲と出かける約束にワクワクしている頃、播磨屋には大変なことが起こっていた。

播磨屋の広大な敷地のうち駐車場の半分くらいの面積は、近所に住む高齢の地主から祖父が借りていたものだ。
ところが先日、その地主が亡くなった。
相続人になった息子が祖父を訪ねてきて、いきなり「この土地を買ってくれ」と言い出した。
息子は莫大な相続税がのしかかって困ったので、貸していた土地を買ってほしいと申し込んできたのだ。
しかし、少々の金額ではない。近くに物流センターができるとわかったことで地価は上昇している。

遠藤家にも多少の財産はあるが、この広い土地を買うと何かあった時の余力がなくなってしまう。
年齢的にも銀行から借りるのは難しいから、困り果てた祖父は店をたたもうかとまで悩んでいた。

「お店はお父さんのすべて、人生そのものよ」

店じまいに真っ先に反対したのは麻子だった。

麻子は父親が客たちのために毎日おいしい料理を提供し続けてきたのを誰よりも知っている。
まだまだ働けるし、若いスタッフたちも播磨屋の味を守ろうとがんばってくれている。
麻子だって、皆から愛されているこの店をこんな理由で手離したくない。


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